「まゆ毛がない顔を初めて見た」早発閉経で不妊治療中に乳がんが発覚した女性「ショックより、自分の体に起こる変化に興味があった」
── コロナ禍での入院だったそうですね。お見舞い禁止の時期で、不安も大きかったのでは? 太田さん:誰もお見舞いに来ないぶん、患者さん同士でおしゃべりする時間が増えて、皆さんとすごく仲よくなったんです。同じ日に入院した人は一緒に説明を受けるので、同期の仲間のような感覚で心強かったですね。あるとき、60代ぐらいのきれいなマダムが、「手術で胸を取りたくない。女性じゃなくなってしまう気がして怖い」と泣いていらして、みんなで「大丈夫ですよ」と励ましたり。ステージ4のある患者さんは「親の介護をしながら自営業でお店をやっていて、自分のことはあと回しにしていたら、ここまでガンが育っちゃったよ!」と、つらいはずなのに、明るくしゃべって周りをなごませていて。そんな入院仲間の存在が心の支えになりました。
乳がん患者やサバイバーのコミュニティにも参加し、積極的に交流しました。全員経験者だから、親身になって寄り添ってくれるし、言葉にも説得力がある。私が参加したコミュニティは、皆さんポジティブで「一緒に頑張ろうね!」という雰囲気だったので、私もずいぶん励まされました。病院や治療方法など、経験を踏まえた有益な情報がたくさん得られ、いい先生にめぐりあうこともできました。 いざ自分が病気になると、わらにもすがる思いになって、いろんな民間療法を試してみたくなるけれど、やはりたくさんの経験者の声に耳を傾けて、冷静に判断することが大事だと実感しましたね。
■治療のためにバッサリショートヘアにしたら ── 乳がん治療中に、脱毛の経緯をSNSで発信したり、お坊さんの格好をするなど、とにかく明るく前向きな姿が印象的でした。 太田さん:髪が抜けるとショックだと聞いていたので、事前にバッサリとショートヘアにしていたんです。ただ、実際に髪が抜け始めるとショックというよりも、「へえ、こういうふうに髪って抜けていくんだ」「まゆ毛のない顔見たのは初めて!」と、自分の体に起こる変化に興味津々でした。