「まゆ毛がない顔を初めて見た」早発閉経で不妊治療中に乳がんが発覚した女性「ショックより、自分の体に起こる変化に興味があった」
── 変化を観察する感覚だったのですね。脱毛した姿を明かすことに抵抗はなかったですか? 太田さん:脱毛が始まるとやっぱり風貌が変わりますから、「大丈夫?」と心配してくださる方がすごく多かったんです。ただ私自身、いかにも病人という感じになるのも抵抗があって。せっかくだから、この頭をいかしてなにかできないかなと思い、いろんなカツラをかぶってコスプレしたんです。それらをSNSに写真をアップしていたら、みんなが笑ってくれて、すごくうれしかったですね。
──「自分の体に起きた変化で遊ぶ」という感覚が、ものすごくポジティブです。病気になると、どうしても気持ちが内向きになって、ふさぎ込みがちになりますが、「現状でできる楽しみ方を見つける」くらいの発想でいたほうが、心が元気でいられるのかもしれませんね。 太田さん:髪やまつ毛などは、抗がん剤の治療が終わったらまた生えてきますから、そういう意味では期間限定の姿だと割りきっていました。髪型にしても、それまでずっとボブにこだわっていたけれど、治療のためにバッサリショートにしたら「意外と似合っているな」と(笑)。今ではショートカットがトレードマークというくらい、自分でも気に入っているんです。
とはいえ、治療が進むと、再発のことを考えて不安になったり、胸が苦しくなることもありました。何もせずに病気のことを考えていると、気持ちがふさぎこんで、よからぬことを想像してしまいそうだから、仕事をガンガン入れて、余計なことを考えない状況を作っていました。大好きな仕事に没頭して、会社や社員の未来など明るいことに目を向けて過ごす方が、自分には合っていたようです。 ── 早発閉経での不妊治療、乳がんの経験を経て、女性たちに伝えたいメッセージはありますか?
太田さん:実感しているのは、早い段階から自分の体の状態について、きちんと「知っておく」ことが、自分を守る何よりの対策になるということです。避妊については学校でも多少教わりますし、みんな理解はしているけれど、不妊に関することは当事者になってみないとなかなか調べませんよね。ましてや、30代の100人に1人ともいわれる早発閉経については、あまり知られていません。いくら医療が発達していて、著名人が40代で産んでいるからといって、自分も可能だとは限りません。一人ひとり体の状態は違いますし、その状態も日々変化します。自分の体を守るのは、自分だけですから、ぜひ大切にしてほしいと思います。
PROFILE 太田可奈さん おおた・かな。1982年東京生まれ。広報誌編集長やコンサル企業経営を経て、ITベンチャー取締役に就任。2022年、教育事業に専念するため株式会社まなぶやを設立。学生起業家育成や学習室運営に携わる。東京理科大学などで教鞭を執り、幅広い分野で活動中。 取材・文/西尾英子 写真提供/太田可奈
西尾英子