里親として血のつながらない子どもを17人育てた夫婦。「還暦のお祝い」「振袖の思い出」今はすべてが宝物【里親体験談】
還暦のお祝い、振り袖の思い出。どちらも長い年月を積み重ねたからこそ
――長年、野口ホームを運営しているお2人ですが、うれしかったエピソードを教えてください。 婦美子 最近、うれしかったことはみんなで温泉に行って、私の還暦祝いをしてくれたことです。実は以前夫のお義母(かあ)さんの還暦を有馬温泉で祝ったことがあるのですが、その話を覚えてくれていた子どもたちが同じように私のお祝いも有馬温泉でしようと計画を立ててくれたんです。メンバーは夫と私と、夫のお義母さん、うちを巣立った子、巣立った子の夫と子ども、今いる子どもたちなど、総勢12名でした。 そのときに子どもたちからお祝いのメッセージを寄せ書きした色紙をプレゼントとしてもらったのですが、そこに書かれたメッセージが温かくて、本当にうれしくて…。中でも野口ホームの開設時からずっとうちで育ってきて、今も私たちのNPOを手伝ってくれる女性がいるのですが、その子が野口ホームってどれだけホッと安心できる場所かをすてきに表現してくれたんです。 それを読んで野口ホームを始めたときのことを思い出しました。そのころすでに私は仕事を始めてから16~17年ほどの月日がたっていたんです。たくさんの子どもたちやご家族と出会って、この世界でずっとやっていきたい思いが強まり、情熱が増す一方で、自分のしてきたことが本当に子どもの利益になっているのかという不安がありました。 これからは、ひとりでもいいから、子どもの人生に影響を与えることができたらと。そう思って野口ホームをスタートして、子どもたちと関わってきたんです。だから、こうしてうちでずっと育ってきた子から、すごくあたたかい感謝のメッセージをもらうことになって。これはもう死んでもいいなと思ったくらい幸せな気持ちでしたね。 ――すてきな思い出ですね。 婦美子 はい。宝物です。ほかにもうれしかったことで言えば、自分が母親に仕立ててもらった振り袖を、うちで育った女の子が20歳の成人のお祝いで着てくれたこともすごくいい思い出として心に残っています。そのときも野口ホームを開いて年数を積み重ねたからこそ、子どもたちが成長し、こうした機会につながったのかなと感じました。今は亡くなった自分の母に、生前にこの振り袖をうちの子が着た写真を見せたら、すごく喜んでくれました。