里親として血のつながらない子どもを17人育てた夫婦。「還暦のお祝い」「振袖の思い出」今はすべてが宝物【里親体験談】
子育ての悩みは抱え込まずに地域とつながって、社会で育てて行こう
――逆に苦労したお子さんのエピソードを教えてください。 婦美子 ある子が学校に行きにくくなったことがありました。高校には入ったけれどもやめてしまって、その後に引きこもってしまったんです。また、スマホを通じて少し心配な人間関係ができて…。すごく関わりが難しかったです。自分たち夫婦だけで何とかすることは難しく、児童相談所の心理士さんやケースワーカーさんと相談しながら進めていきました。 ただ、この経験から感じたのは、里親に限らず、一般家庭でも同じようなことは起こっていて、悩みを抱え込んでしまう人がいるんだろうなということ。子どもに何かが起きると親が何とかしないといけないとどうしても考えがちですが、子どもを何らかの社会資源につないで助けてもらったり、誰かに相談にのってもらったり…。子どもは地域や社会で見ていくことが大事だと思いましたし、それをもっと伝える必要があるとも考えました。実際、私たちの運営するNPOでは里親支援や、地域の子育て支援にも力を入れています。 ――子育てには相談できる場所が必要ですよね。 婦美子 そうだと思います。里親に限って言えば、里親になる方にはできるだけ里ママ友・里パパ友を作ってほしいとお伝えしています。私自身、里母になったことで子どもは産んでないけど普通のママ友ができて、輪が広がって、楽しいんですけど。抱える悩みの内容によっては、同じ境遇じゃないと話せないなぁと思うことも多いんです。里親さん同士で悩みや愚痴を吐きあったりする場所が必要です。もちろん、解決はなかなかしないんですけども、同じことがあるんだなとか、あの人もそういう経験して今があるんだなとか。同じ立場で交流ができると、お互い心が楽になれると思います。 啓示 僕は普段、広島の福山市立大学で教員をしているんですが、福山には里親の支援センターがあり、里親の親父の会でこの間、飲み会をしたんです。これからも定期的にしていきましょうという話になったのですが、通常、男性って里親向けの子育てサロンとか行かないんですよ。僕くらいです(笑)。それに僕は専門家なので、そこにいても気にせずいられますけど、一般的にはハードルが高い。だから、そういった飲み会の取り組みなんかはとてもいいと思いましたね。 札幌でも同じような会があったんですけど、里親になる方はみんなパワーのある人が多いし、面白かったですね。なので、里親のお父さんの関係もどんどん活性化していかないと!と考えています。 お話・写真提供/野口啓示さん、婦美子さん 取材・文/江原めぐみ、たまひよONLINE編集部 「縁のあった子はできるだけその子のいい面を伸ばしてあげたい」と語る婦美子さん。子どもたちにとって、そうした温かな目で見守ってくれる大人と出会うことは何よりも大きな財産なのではないかと感じました。 後編では、子どもと関わることで印象的だったエピソード、お2人の今後の展望についてのお話を聞きました。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。