なぜ「令和ロマン」は連覇失敗のリスクがあるのに今年もM-1に出るのか…常人には理解できないシンプルな理由
2023年のM-1グランプリを制し、今年も連覇なるかと注目されるコンビ「令和ロマン」(吉本興業)。お笑い界をウォッチするラリー遠田さんは「今はちょうど歴史の節目。松本人志が芸能活動を休止し、新しい動きが起こっている。令和ロマンもこれまでの慣習にとらわれない道を選んだ」という――。 【写真】M-1優勝を果たし、住宅会社の記者発表会に登壇した令和ロマンの高比良くるまと松井ケムリ ※本稿は、ラリー遠田『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。 ■松本人志騒動でお笑い界は誰が勝つかわからない「幕末」に お笑い専門ニュースサイト「お笑いナタリー」で連載されている対談記事の中で、ウエストランドの井口浩之はこんなことを言っていた。 ---------- 松本(人志)さんのこともあったからか、幕末みたいな感じになってきていますよね。何が残って、何が滅ぶか全然わからない。けっこう動乱の世に突入している感じはします。 (ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2024年1月のお笑い」/「お笑いナタリー」) ---------- これを読んだとき、「幕末」という言葉が妙にしっくりきた。もともとお笑い界では「天下を取る」という表現もよく使われているので、まさに幕末という表現がふさわしい。 絶対的なボスだと思われていた松本が芸能活動を休止したことで、長く続いていた体制が終わりを迎えて、さまざまな形で新しい動きが起こっている。ちょうど歴史の節目に立ち会っているような感じがする。 ■M-1グランプリ2023を制した令和ロマンの新しさ 2023年12月24日に行われた「M-1(エムワン)グランプリ2023」を制したのは、高比良くるまと松井ケムリの2人から成る令和ロマンだった。2018年優勝の霜降り明星とほぼ同世代であり、最近のM-1チャンピオンの中では霜降り明星に次ぐ若さだった。令和ロマンは何もかもが規格外の大型新人としてお笑い界に名乗りを上げた。慶應義塾大学のお笑いサークル出身の高学歴芸人であり、学生時代からその界隈では有名な存在だった。 吉本興業のお笑い養成所「NSC東京」を首席で卒業し、プロ1年目でワイルドカード枠(敗者復活システム)で「M-1」準決勝進出を果たした。2020年には「NHK新人お笑い大賞」で優勝した。 そんな令和ロマンの「M-1」優勝は、2018年の「M-1」で史上最年少優勝を果たした霜降り明星とは別の意味で新世代の芸人らしさを感じさせるものだった。優勝に至るまでの戦略と優勝してからの動きに関して、それまでの常識とは全く違うものがあったからだ。 コンビの頭脳とも言える存在のくるまは、自分たちの戦略に関してさまざまな場所で積極的に語っている。芸人が裏側の部分をここまであけすけに語ることも珍しいし、そこで語られている内容も興味深い。