<北陸新幹線の観光効果>老舗長野の“小さな開国” 強敵は金沢?
北陸新幹線が14日、長野以北の金沢まで延伸開業しましたが、沿線の延伸振興策で微妙な立ち位置にいる長野県の動向が注目されます。これまで「長野新幹線」(東京~長野間)で一身に新幹線のメリットを享受してきた長野県が、今後は北陸各県、新潟県などと競争関係に入るからです。初の新幹線を迎える北陸各県などの強い意気込みに伍して、先行してきた長野県が魅力づくりにどう取り組むかが問われています。 【動画】北陸新幹線の旅 車窓から眺める雄大な立山連峰から日本海まで
「攻め」の金沢、富山、上越
金沢、富山、上越など「初の新幹線」を迎える地域が攻めの戦略に立つ一方、長野県はJR長野駅を終点として18年間運行してきた長野新幹線の利点に立ちながら、ライバルから追われる立場にもなります。長野冬季五輪(1998年)の前年1997年に北陸新幹線の一部区間として開業した長野新幹線に、当時の沿線県民は沸きました。今回の金沢延伸でも、7年に一度とされる善光寺(長野市)のご開帳がちょうど4月5日から始まるため、地元にとっては二重のビッグイベント。しかし、その盛り上がりが長期的な沿線振興につながるとは限りません。 長野県にとって気になる北陸、新潟の延伸振興策や波及効果はどれくらいのものなのでしょうか。現在、東京~金沢間は上越新幹線・越後湯沢駅から在来特急「はくたか」を利用して4時間近くかかります。JR西日本によると延伸後は最速新幹線による金沢―東京間の時間短縮は1時間半前後、金沢~長野間は同2時間前後、富山~東京間は同1時間前後になります。 この時短インパクトは大きく、日本銀行金沢支店の1月のリポート「北陸の中小企業の現状と活力ある企業の特徴」では、北陸新幹線の金沢開業を控えて広告需要が増加しているとの声も聞かれると指摘。日本政策投資銀行富山事務所が2013年にまとめた「北陸新幹線開業による富山県内への経済波及効果」によると、延伸で富山県への首都圏からの入り込み数は22%以上の増加が見込まれ、その経済効果は観光で年41億円、ビジネスで年16億円と推定。その波及効果は年間88億円と試算しています。 新潟県上越市がまとめた金沢延伸効果は、東京まで17分、長野まで71分、富山まで39分、金沢まで57分の時間短縮。これに伴い、1時間以内に上越市に到達できる地域は現在の6・8倍にまで広がり、その圏域内の人口は350万人に。さらに2時間以内で到達できる圏域は現在の3・7倍、3500万人に上るとしています。そして、上越市は北信越エリアのほぼ中央に位置し、北陸道と上信越道の接続地点にもなっている上、直江津港の存在も含め延伸により「アジア地域との交流の拠点になる可能性を有している」とうたい上げます。 さらに、北陸新幹線の上越妙高駅を中心とする上越、妙高、柏崎、十日町、佐渡の5つの市が連携して新幹線開業プロジェクトを盛り上げる「ようこそ。越五の国へ。」キャンペーンを2013年からスタート。「上杉謙信公以来の恵みあふれる国」と、地域ぐるみで誘客に熱が入ります。