<北陸新幹線の観光効果>老舗長野の“小さな開国” 強敵は金沢?
「ストロー効果」への懸念
長野県では新幹線がその先の新潟、北陸につながることで「新たに金沢、富山などからの入り込みが期待できる」との見方がある半面、逆に他地域に吸引されるのではないかとの懸念も根強いのです。金沢延伸に向け3月7日にオープンしたJR長野駅の駅ビル「MIDORI長野」。上田市から家族連れで訪れた団体職員の男性(49)は「延伸で金沢、富山に行けるのはうれしい」としながらも「長野県内が通過点にならないか心配です」と話します。 その兆候は18年前の長野新幹線開業時にも「ストロー効果」として指摘されました。当時は東京~長野間が在来線特急でも3時間近くかかっていたため日帰り出張は難しかったのですが、新幹線開通で日帰りエリアになったため企業の長野営業所などが次々に廃止、縮小され、長野の経済に影響を与えました。それまで地元での買い物が多かった女性なども「銀座まで日帰りで」ということが珍しくなくなったのです。
そうなると、それぞれの土地の持つ魅力が決め手になります。これまで旧・長野新幹線の終着駅を持ち、新幹線の利点をいわば独占していた形の長野県や長野市にとって金沢延伸は“小さな開国”。長野市民の間では「金沢の城下町文化、富山の魚や自然、長野の善光寺やリンゴ、そば」を挙げて、どこが吸引力を持つかが話題になります。特に金沢は強敵との見方もあります。 その前哨戦として、沿線の石川、富山、長野、新潟など各県は、東京に設けたアンテナショップで特産品のPRや販売に力を入れています。有楽町駅から7分の好位置に構えた長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」(中央区銀座5-6-5)には、信州そばや漬物、日本酒など多くの物産が並びます。観光情報の提供や、長野県への移住、就職の相談にも応じるなど、PR作戦は多彩です。
「その先の地域」への関心
しかし、JTB総合研究所によると新幹線開業への期待は沿線にとどまりません。鹿児島新幹線(2011年開業)の場合、新幹線鹿児島中央駅から在来線特急で1時間近くかかる薩摩半島南端の指宿市で同年の宿泊客が前年比13%以上増え、日帰りを含む全体では同2%近い増加になり開業の効果があったといいます。心理的な距離が近くなれば、新幹線が着いたその先の地域にも関心が集まり、「北陸新幹線の場合は金沢のさらに先の能登半島や温泉、白川郷、高山などの周遊の機会の増加が期待できる」といいます。それは長野県でも同じことで、周回軌道方式などをどう実現するかが課題になります。 株式会社ブランド総合研究所(本社・東京都港区)による都道府県の魅力度ランキング(2014年)によると、トップの北海道から京都府、沖縄県と続き、長野県は前年と同じ9位でしたが、石川県は11位(前年14位)、富山県23位(同21位)、新潟県35位(同30位)。「信州」ブランドの強みをうかがわせます。新幹線先取り県として北陸、新潟に追われる立場で老舗の実力を示せるかどうかが、今後の長野県を占うことになります。 (高越良一/ライター)