登山鉄道でゆれる富士山「最大の懸念」は噴火…発信できるのは、「どこで」と「いつ」だけ
予知可能性が比較的高い「どこ」と「いつ」
まず地下の深いところで、水などの液体がゆっくりと振動する低周波地震が起こる。次に、マグマが地上へ向けて上昇してくると、火道の途中でガタガタ揺れるタイプの高周波地震が起きる。これはときには、人体にも感じられる有感地震となることがある。 その後、噴火が近づくと、比較的浅いところで細かく揺れる火山性微動が発生する。 このように地震の起きる深さは、マグマが火道を割って上昇するにしたがい次第に浅くなってゆく(図「噴火前に地下で地震が起こる場所」)。こうした変化を多数の地震計を使って注意深く追いかけると、富士山の直下でマグマがいつ地上に上がってくるかがわかるわけだ。 これらのデータは、地震発生と同時に、電話線もしくは電波を通じて観測所に集められる。これを解析することで、火山体の地下のどこでどのような強さの地震が起きたかを、三次元的に突きとめ、マグマの動きを逐一把握するのである。 このように、多様な姿を見せる火山性地震をくわしく観測することで、噴火予知の5要素のうち「どこから(場所)」と「いつ(時期)」については知ることができるのである。 * * * 被害軽減の重要なカギ「噴火予知」。噴火予知の5要素のうち、火山性地震の観測で「いつ」「どこで」は予知できることがわかりました。もっと予知が可能な要素や、精度が高まる技術は、あるのでしょうか。
鎌田 浩毅(京都大学名誉教授)