登山鉄道でゆれる富士山「最大の懸念」は噴火…発信できるのは、「どこで」と「いつ」だけ
噴火スタンバイのサイン「火山性微動」
火山で観測される地震には、高周波地震と低周波地震のほかに、「火山性微動」と呼ばれるものがある。噴火が始まる前の兆候として、新聞などにしばしば登場する言葉だ。 火山性微動は火山の周辺だけで観測される、人には感じられないほど小さな地震である。揺れの始まりと終わりがはっきりせず、短いものは数秒程度、長いものは数週間も続くものもある 一般に火山性微動は、火道の中でマグマや火山ガスが上昇するときに起こると考えられている。このとき火山の下で地下水やガスが震動することで、地震が起きるのだ。また、火口から噴煙を盛んに放出するときにも、火山性微動が発生する。いわば、鍋の中でお湯がぐつぐつと沸騰している状態である。 火山性微動は噴火の直前予測の重要な手がかりとなる。火山性微動が頻繁に起きると、数日から数時間で噴火につながることが多いからだ。こうなると噴火が間近い「スタンバイ状態」となったことを意味するので、火山学者は緊張する。マグマが地表から噴出する前に、火山の近くに住んでいる人々に安全に避難してもらうための仕事が待っているからだ。 このように火山性微動の発生回数が急激に増える様子を過去の噴火と比較して、噴火の時期をおおまかに予測する手法は、これまでハワイのキラウエア火山(本記事の冒頭写真)や北海道の有珠山などで活用されてきた。
火山性地震からわかること
低周波地震、有感地震、火山性微動を合わせて「火山性地震」と呼ぶことがある。これは阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などを起こした「構造性の地震」と区別するために使われている用語である。火山性地震の多くは周辺の住民にも感じられないほど微弱な地震であり、高感度の地震計を用いて初めてとらえられる。 火山性地震のデータは、噴火予知においてきわめて重要である。 一つには、マグマがどこに上がってくるかを予測することができる。多くの活火山の周囲には、地震計が火口の中心を取り巻くように数十ヵ所以上も設置されている。地震計は地面の揺れを、東西、南北、上下といった3成分に分けて記録する。それらのデータを集積することで、地下のどこで地震が起きたかを正確に求めることができるのである。 もう一つ、火山性地震の発生からは、マグマが地上に噴出するまでの時間を推定することもできる。たとえば、地震の発生回数が急激に増える様子を、過去の噴火の例と比較して、噴火の時期をおおまかに予測するのだ。