大学野球の「2部、3部制」「入れ替え戦」がもたらす“精神的な強さ” 過去最高タイの3位…盛岡大躍進の理由
限られた時間で…元花巻東コーチが伝えた練習の重要性
藤澤監督の言うように、コーチ陣の存在も大きかった。花巻東でのコーチ経験を持つ松田コーチはその一人。高校野球の強豪校で培った指導方法を大学野球でも活用している。
例えば、選手たちには「試合重視」から「練習重視」に考えをシフトチェンジさせた。盛岡大の監督、コーチは大学職員として勤めているため、平日の練習は始業前の約1時間半で行う朝練習がメインで、指導時間はそう多くない。限られた時間の中、練習試合の結果に左右されるよりも、試合に生かすための練習を充実させた方が得策、との考えだ。 練習試合でも単純に勝敗にこだわるのではなく、「2死から点を取れないとしても走者を出して少しでも点を取る確率を上げて、何か流れを変えるようなことをしてイニングを終わらせよう」などと公式戦を意識した声かけを心がけた。練習での指導時間が少ない分、試合中に直接修正点を指摘し“宿題”を与えることもある。
「格上相手に勝つ」1部の醍醐味を味わうために
飛躍の要因はそれだけではない。主将の佐々木歩は「2部に降格して、入れ替え戦で負け続けて、特にずっと苦しい思いをしてきた4年生は精神的に強くなった。その4年生が責任感を持ってプレーし、チームを引っ張れたことが一番の要因だと思います」と話す。
今年の4年生は1年時から試合に出場していた選手が多かった。1年春に2部で優勝して1部に昇格し、2年春に再び2部に降格。その後は2部で優勝を逃したり、入れ替え戦やプレーオフで敗れたりと苦しいシーズンが続き、今秋ようやく1部の舞台に戻ってきた。単に試合をこなす過程で得られるもの以上の経験値を積んだことは言うまでもない。 「1部はすべてのプレーにおいてレベルが高い。格上相手の勝負に臨む、そしてそこに勝つ楽しさがある。それは1部でしかできないことなので、どうしても1部でやりたかった」と佐々木。優勝のみならず、さらに上を本気で目指す2部チームには、計り知れない底力がある。
途中でやめた4年生も…チームを勢いづけた“一体感”
「5勝」目を挙げた9月15日の青森中央学院大戦では、「7番・指名打者」でスタメン出場した高橋佑外野手(4年=本荘)が均衡を破る先制の2点適時打を放ち、塁上でベンチに向かって拳を突き上げた。1部でのスタメン出場はこの日が初めて。2部時代も主力を張る選手ではなかった。 苦楽をともにし、経験値を積んできた4年生だが、全員が4年秋まで野球を続けたわけではない。就職活動や資格試験勉強に専念するため、途中で部を離れた同期もいる。8月上旬まで教員採用試験を受けていた高橋も一時は競技継続を迷ったものの、練習につきあってくれる仲間に背中を押され秋もバットを握った。