「『昔のほうが良かった』なんて言う奴は気にしなくていい」――千原ジュニアが感じるお笑い界の変化 #昭和98年
大きく変わった「ツッコミ」と若手の在り方
ひな壇ということばができたのは、ここ15年か20年ぐらい前のこと。昔はお笑いは個人競技だったが、今は団体競技に近くなってきたとジュニアは語る。中でも、大きく立場を変えたのが、「ツッコミ」だ。 「お客さんにネタの面白さをわかりやすく丁寧に説明できる人、だと認識されるようになりましたよね。昔は料理人とホールだったら、料理人のほうが立場が上だった。今はホールの地位も上がって、味より接客が素晴らしいからと店に通う人も増えてきました」 笑いは自由自在にその形を変える。答えは一つではないからだ。その一方で、若手の在り方にも変化を感じる。 「何て言うんでしょう。野菜でいうと土がついてないですよね。我々の頃は、土がバンバンついた状態で店先に並んでいて、それを消費者の方が許してくれた。今はこんなもん並べるなってクレームがくる。『土がついててもいいじゃないか』と言う人がいたとしても、結局売れない」 その結果、きれいで形のいいものばかりが並ぶようになる。時代のニーズに対応して、進化してきたということなのだろうが……。 「いつの時代も『昔のほうが良かった』と言う奴らが必ず出てくる。でも改善を求めたのはお前らちゃうんかって思いますね。それでもそれをクリアしながらちゃんとほんまに面白い笑いを起こす芸人はいっぱいいますよ」 刻一刻とルールが変わり続ける「お笑い」というリングの上で、ジュニアは今日も最高の笑いを求め戦い続けるのだろう。15歳の自分が選んだ道は正しかったのだと思えるように。
千原ジュニア 1974年生まれ、京都府出身。中学を卒業後に、実の兄であるせいじとお笑いコンビ「千原兄弟」を結成。尖った芸風から“ジャックナイフ”と称されたことも。今年5月に自身が手がけた4コマ漫画『嗚呼 蝶でありたい』を上梓し話題に。 ――――― キンマサタカ 1977年生まれ。大学卒業後、出版社に就職。2015年に独立。写真家としても活躍。著書に『痛風の朝』『文春にバレない密会の方法』など。 「#昭和98年」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。仮に昭和が続いていれば、今年で昭和98年。令和になり5年が経ちますが、文化や価値観など現在にも「昭和」「平成」の面影は残っているのではないでしょうか。3つの元号を通して見える違いや残していきたい伝統を振り返り、「今」に活かしたい教訓や、楽しめる情報を発信します。