「『昔のほうが良かった』なんて言う奴は気にしなくていい」――千原ジュニアが感じるお笑い界の変化 #昭和98年
僕はこの先も吉本を辞めないでしょうね
時代とともに、芸能事務所とタレントの関係性も変わりつつある。所属事務所への不満を公言する者、これまで封印されてきた大手事務所の前社長による性加害問題なども連日ニュースを騒がせている。事務所とタレントのパワーバランスは変化し、積極的に独立を選ぶ者も増えた。 「僕は吉本を辞めるという発想は全くないんで、その選択はすごいと思いますよ。自分たちが小さい頃って、『職を転々とする人は、社会人としていかがなものか』という風潮がありましたけど、今はバンバン転職するのが当たり前の時代ですからね。でも僕はこの先も辞めないでしょうね」 これだけの実力と人気を兼ね備えながら、外の世界に漕ぎ出す気は毛頭ないと語る。大きな要因は「自分が中卒だったから」だ。 「35年前でも、中卒は全体の1%に満たなかった。だから、お笑いにしがみつくしかないと思いながらやってました。僕には高校時代にみんなが当然のように経験している思い出が欠落してます。彼女ができたのも、飛行機に乗ったのも、吉本に入ってから。僕を育ててくれた学校だったわけです」
タレントや芸人のブレーキを踏むタイミングが早くなった
タレントのビジネスモデルも変わり続けている。30年前は仕事といえば、テレビ、ラジオ、そして劇場くらいしかなかった。そこから声がかからなければバイトなしでは生活できなかった。だが、現在は劇場やテレビに出られなくても、スマホ一台あれば世界に向けて配信ができるし収益化できる。スマホの小さな画面で、世界中のファンとつながる。 受け手のあり方も変わった。 「昔はテレビ見てて番組が気に入らなかったら、受話器を手に取って、電話代を払って、文句を言う、という手間が必要だった。今は皆さんが、SNSで気軽に発信できるようになって、その声が届くようになりましたから」 どこかの芸能人が何をした、テレビでこんなことを言ったという小さいネタさえ、すぐさまネットニュースになり、スマホで消費されていく。 「話題になるのはありがたいですけど、こちらからしたら、その前にあった会話の流れを無視して切り取られるから、非常に不愉快だと思うこともあります。そして、ある日寝て起きたら炎上してた、みたいなこともありえるわけです。おかげで、タレントや芸人のブレーキを踏むタイミングが早くなりましたよね」