「100均」セリアは女性管理職が50%超 社長肝いりのデータ化がもたらした働きやすさとは? #令和に働く
──システム構築には銀行勤務時代の知見も生かされていますか。 銀行の審査部にいた時も、融資が可能かどうかの判断をコンピューターを使って自動化する仕組みをつくっていました。開発予算が取れないので、自分でプログラミングもやってね。やっていることはセリアでも同じです。データを扱って、精度よく予測を入れるということですから。こうしたデータ化は、結果的に「100均」業界が一番ハマった。価格が均一というシンプルなビジネスで、コンビニのように値段を細かく操作して棚割りを組むような、複雑なマネジメントをしなくてもいい。数字による統計と、親和性が高いと感じています。 ──導入したシステムはさまざまな指標を数値化するようになっていますね。 私は「レジにPOSシステムを入れるだけではうまくいかないよ」と入社時から言っていたんです。売れたものを補充するだけなら、いずれだいたいの商品は売れなくなり、全体の売り上げもしぼむ。そうではなく、商品の売れ行きカーブを見ながら、どれだけ追加で発注するか、あるいは廃番にするか。その基準を根拠をもって決めていく。そのロジックの最適化が大事なんだと考えていました。そこでひらめいたのが、POSデータから最適解を導き出す「発注支援システム」なんです。
──どんなふうにひらめいたのですか。 ヒントになったのは、岐阜県関市に観光で行った際に見た刀鍛冶の光景です。熱した鋼をトンカンと何回も槌でたたく。同じ作業を繰り返すことで、靭(つよ)い刀剣にしていく。その像が頭に残っていて、セリアの店頭に立っていた時に「あっ、そうか」と。レジを通過した商品一つひとつに、うっすら利益が乗っていれば、その積み上げでやがては大きな利益になる。ならばセリアでも、毎日繰り返し計算できる仕組みをつくって、最適な計算式さえ入れれば、大きな利潤を生むビジネスがつくれるぞとイメージが浮かんだんです。
「働きやすさ」もバイアスのないデータから生み出す
──そうしてつくったシステムは最初からうまくいったのですか。 アルゴリズムの歪みを直すのに2年かかりました。システム開発から2年間は試行期間でしたが、私はシステムによる商品発注の度合いを、20%、40%というふうに、徐々に上げていきました。試行期間中はシステム化を失敗と捉える人もいました。でも中長期での成功を考えていた私には「100%の機械発注をやり切れば必ずうまくいく」という確信と勝算があった。実際システムを軌道に乗せた2009年ごろからは、毎年のように営業利益率が上がっていきました。