夏も練習したいのに… 熱中症対策と地域の理解 部活指導者と生徒が悩むジレンマ #こどもをまもる
各地で猛暑日が続いている。対応を迫られているのが、スポーツの現場だ。なかでも、学校の部活動や地域のスポーツクラブなど、子どもたちが運動する環境が激変しており、多くの自治体で部活動や屋外授業を取りやめる動きが出ている。一方、子どもたちがスポーツを楽しみ、実力を高める機会を奪わないことも必要だ。「熱中症予防運動指針」(日本スポーツ協会)の策定に携わった医師は、「指針はあくまでもベースとし、現場が考えて議論し合い決めることが重要」と話す。学校の教員やスポーツ少年団の指導者など、指導にあたる大人たちのジレンマと、どのような対策が求められるかについて取材した。(取材・文:高島三幸/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
熱中症予防のガイドライン「暑さ指数31℃で原則運動中止」
「毎週土曜は、朝8時から子どもたちの練習を見ていますが、本当に暑い。今日(今年の7月6日)も10時前にはすでに『暑さ指数31℃』超えでした。練習を終えた10時以降はサッカー部の試合があると聞きましたが……」 そう話すのは、弁護士の置塩正剛(おきしお・せいごう)さん(52)。短距離選手としてマスターズ陸上競技選手権大会に出場しながら、一昨年から木曜(隔週)と土曜に、東京都世田谷区の公立中学校の陸上部で外部指導者として活動している。 「『地球沸騰化』とも言われる近年の夏は、ほとんどの日が『暑さ指数31℃』か、それ以上。この指数を杓子定規に守っていたら練習も試合もできず、子どもたちがスポーツする機会を失う。子どもの体は守りたい。でも運動ができなくなる。これが現場のジレンマだと思います」
置塩さんを始め部活動の指導者などが戸惑うのは、日本スポーツ協会(JSPO)が決めた「暑さ指数31℃で、運動は原則中止。特に子どもの場合には中止すべき」という熱中症予防の運動指針があるからだ。 「暑さ指数」とは、「気温」「湿度」「地面や建物、人体から出る放射熱」などから算出する指標。「暑さ指数31℃」の目安となるのは、気温35℃だ。 近年の猛暑で、各自治体から小学・中学・高校などに「危機管理マニュアル」が発信され、それに基づいて、各校が体育の授業や運動部部活の実施を判断する。その基準として主に用いられるのが、この「暑さ指数」になる。 広島市では、「暑さ指数」が一定基準を超えた場合、部活動やプール授業などを中止するよう定めている。北海道教育委員会は、「暑さ指数31℃」で部活動は原則中止、「熱中症警戒アラート」(暑さ指数33℃以上の予測)が発表されたら臨時休校を検討せよ、とした。千葉県の小学校では7月上旬、午前8時前の気温が36℃だったため、屋外プールの授業を中止した。全国各地で、猛暑に配慮して部活動や屋外授業を取りやめる動きが出ている。