手打ちパスタのコースが4,180円! 予約困難になる前に行きたい、阿佐谷のイタリアン
前菜のサワラは、皮目だけをさっと炙り、ペースト状にした玉ネギとケッパーでマリネ。ケッパーの酸味と玉ねぎの風味が塩梅よくしっとりしたサワラの身になじみ、冷えた白ワインが似合う粋な味わいだ。一方、イタリアの魚醤「コラトゥーラ」で味付けした本マグロのタルタルは、ネギならぬバジルを混ぜ、オリーブオイルで和えている。一見、和のようでもあるが、味の印象はしっかりとイタリアン。ワインを呼ぶ味だ。
また、プロシュートコットとは、平たく言えば、イタリアのボンレスハムのこと。沖縄の豚を使った自家製で、通常はソミュール液に漬けてからボイルするところを、石田シェフの作り方は至ってシンプルだ。「一晩、塩に漬けてから68℃の温度で2時間ほどゆでています」とのこと。肉の味がピュアに伝わる優しい味わいに、ホースラディッシュのすっきりした辛みがアクセントとなっている。
続いてのパスタが秀逸。口にした瞬間、茗荷谷「バーゼ」のそれが、一瞬脳裏をよぎった。「バーゼ」は、筆者の知る限り、おそらく日本で唯一、パスタ作りの工程をすべて手打ちで行うパスタ専門店(工房と呼んだ方がふさわしい)。そのデリケートなパスタを思わせるほど、その食感は優しく軽やかなのだ。
タリオリーニは、北イタリア・ピエモンテのパスタで、水は一切使わず全卵のみで打つ卵麺。ここではやや卵黄を多めにして打っているそうで、石田シェフによれば「具が鱧と青唐辛子とさっぱりしているので、全体が軽く上がるようやや薄めに打っています」とのこと。滑らかさの中にコシのある麺に青唐辛子の爽やかな辛みが粋な組み合わせ。一気に食べてしまうこと必至のおいしさだ。
メインは、北海道十勝産のジャージー牛のランプ。岩手県産短角牛の時もあり、牛はサシの入らない赤身のしっかりした味わいの肉を選ぶ姿勢は「ダ・オルモ」の倣いだろうか。
周りを炭火で焼き固めつつ、中はロゼに焼きあげたジャージ牛は、塩とオリーブオイルのみと味付けは至って潔い。素材の持ち味を引き出す達人・北村シェフの教えがうかがえる。ガッツリと噛み締めてワイルドな味わいを楽しみたい。さらに見逃せないのが付け合わせの野菜たち。石田シェフが惚れ込んでいる山形「お日さま農園」の旬野菜だ。