なぜJ2大宮対福岡は試合開始2時間前に急遽中止が決まったのか…偶然の回避に見えたJリーグPCR検査体制の盲点
すでに一部のファン・サポーターが入場していた大宮アルディージャのホーム、NACK5スタジアム大宮に異例のアナウンスが鳴り響いた。午後7時のキックオフまで1時間あまりに迫っていた、アビスパ福岡との明治安田生命J2リーグ第9節の突然の中止が告げられたからだ。 2日の午後5時近くにJリーグへ入った緊急連絡が、キックオフ前の時点でそれぞれ2位と3位につけていた、アルディージャとアビスパが激突する上位対決を取り巻く状況を一変させた。 全56クラブに対して先月31日にいっせいに実施されていた、Jリーグによる第4回公式PCR検査の結果、アビスパの選手一人に対し陽性の可能性が非常に高いと判定されたことが判明。感染症の専門家と協議した末に、中止とする結論がホームクラブのアルディージャへ伝えられた。 Jリーグの村井満チェアマンは中止決定から約30分後の午後6時15分から、アルディージャの森正志、アビスパの川森敬史両代表取締役社長とともに緊急のオンライン会見を開催。すでに両クラブの先発メンバーも発表されていたなかで、中止に踏み切った理由をこう説明した。 「仮にその選手が陽性だった場合、チーム内で濃厚接触が起こっている可能性を否定できなかったゆえに、今回は試合の開催を見合わせようという判断をこのタイミングで下しました」 PCR検査で陽性判定が出た選手だけでなく、当該選手の濃厚接触者と認定された選手も、直近の公式戦にエントリーすることはできない。しかし、実際に陽性判定となった場合に、それを受けて所轄保健所へチーム全員の行動履歴を提出し、確認作業を待つ時間的な猶予は皆無に等しかった。 両チームの選手やスタッフ、関係者、そして来場していたファン・サポーターの安全を守る上で、中止とした判断は正しかった。しかし、ここで疑問が残る。 第4回公式PCR検査の結果はJ1は3日、J2およびJ3は4日に判明する予定になっていたなかで、なぜ2日に連絡が入ったのか。 答えはJ2のFC町田ゼルビアのルーキー、FW晴山岬(帝京長岡高卒)が新型コロナウイルスに感染したことと密接に関連している。1日から千葉市内で行われる予定だったU-19代表合宿が、選手の一人がPCR検査で陽性が出たことを受けて急きょ中止となっていた。一夜明けた2日になって、ゼルビアはその選手が晴山であることを公表した。村井チェアマンが続ける。 「町田の選手が陽性であるという連絡を受けて、私たちは極めてイレギュラーな対応を検査センターへお願いしました。チーム内で濃厚接触している可能性があるので、町田の検査判定を急いでほしいと。同時にJ2全体の検査スピードも上げていただいたなかで、今回の福岡の一人も含まれていました」