なぜJ2大宮対福岡は試合開始2時間前に急遽中止が決まったのか…偶然の回避に見えたJリーグPCR検査体制の盲点
ゼルビアは2日午後6時半から、敵地サンガスタジアム by KYOCERAで京都サンガF.C.戦を控えていた。 試合に臨むメンバーが前泊するために京都入りした直後の1日午後6時ごろに、日本サッカー協会(JFA)から晴山に陽性判定が出たという緊急連絡が入った。 晴山は7月31日までゼルビアの練習に参加していたため、他に感染者がいるおそれがあった。また、晴山の濃厚接触者はサンガ戦にエントリーできないため離脱者の人数次第では最悪の場合、公式戦を予定通り開催できる最低の人数である、ゴールキーパー1人を含めた14人に満たないおそれもある。 サンガ戦を予定通り開催するために、ゼルビアの検査判定を急がせる必要があった。すでに選手の行動履歴を所轄保健所へ提出し、遠征メンバーのなかに晴山の濃厚接触者はいないという報告を受けていたゼルビアのもとに、陽性は晴山だけだったという連絡が入ったのは2日午後3時半すぎだった。 一連の情報が提示され、Jリーグ関係者や専門家を交えながらサンガと話し合いが行われた結果として試合は開催された。キックオフ前にオンライン会見に臨んだ、ゼルビアの大友健寿代表取締役社長は「(開催決定は)ギリギリのタイミングでした」と振り返るとともに、こんな言葉を紡いでいる。 「代表の合宿があって初日にPCR検査ができたわけですけど、これが(代表合宿に行かずに)本日の試合で(晴山が)遠征メンバー入りしていたら、と想像すると怖いところがあります」 仮定の話になるが、U-19代表に招集されなければ晴山の結果は4日までわからなかった。そもそも金曜日をメインに2週間ごとに検体を採取するJリーグの公式PCR検査は、翌週の水曜日以降の2週間に行われる公式戦へ出場する上で、安心安全を担保するために設定されている。 第4回公式検査で言えば、8月5日以降の2週間が対象になる。しかし、検査実施日と5日の間に行われる公式戦との間に“隙間”が生じてしまうことが図らずも明らかになった。陽性が判明した晴山や陽性の可能性が極めて高いとされたアビスパの選手が、見逃されていたおそれがあるわけだ。 さらにつけ加えれば、ゼルビアやアビスパは検査センターの職員が週末返上で検査にあたったが、すべてのクラブを前倒しさせることはマンパワー的に難しい。1日および2日に行われた全カテゴリーのリーグ戦で、エントリーしたすべての選手に陰性が確認されていたのか、とオンライン会見で問われたJリーグの藤村昇司特命担当部長は「そこまではできていません」と答えている。 「機械へ一度に通すことのできる検体件数が決まっているので。順番を(検査センターで)前後してくれているなかで、早くわかるクラブとちょっと後で、というクラブに分かれていると思います」 公式検査の実施が決まった5月下旬は、全47都道府県に発令されていた緊急事態宣言が解除され、新規感染者数も落ち着いていた時期でもあった。ひるがえっていま現在は、東京都や大阪府などの大都市圏を中心に感染が再拡大。秋に来ると予想されていた、第2波を指摘する声も少なくない。