発熱者出るも強行されたサガン鳥栖対FC東京戦の舞台裏で一体何が起きていたのか?
J1勢で唯一、未勝利だったサガン鳥栖に今シーズン初白星を、J2時代を含めた対戦成績が4勝4分けと無敗だったホームの味の素スタジアムで献上した直後のオンライン会見。FC東京の長谷川健太監督は「情けないです」と第一声を絞り出した直後に、知られざる舞台裏を明らかにした。 「もちろん負けた言い訳にはならないと思いますが、選手たちを少しかばうのであれば、試合前、今日の午後になって鳥栖の選手が発熱したという話を聞きました。抗原検査を受けたいという話がクラブに来て、その選手は結局メンバーに入らなかったのですが、濃厚接触者がいるのか、いないのかがわからない状況のなかで、今日の試合へ臨ませなければいけなかった」 開幕から5試合連続で無得点に終わるなど、前節まで複数得点をあげた試合が一度もなかったサガンが3ゴールを奪取。FC東京の反撃を2ゴールに抑えて逃げ切った1日の明治安田生命J1リーグ第8節には、サガンが空路で東京入りした7月31日の夜から慌ただしい動きが生じていた。 遠征に帯同した選手の一人に37.5度の発熱が確認された。一夜明けた1日朝の段階では平熱に戻っていたが、サガンはチームドクターと相談を重ねた上で、Jリーグが定める「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に従って、体調を崩した選手を鳥栖へと帰らせた。 70ページを超えるガイドラインでは、チーム内に37.5度以上を出した選手やスタッフ、関係者が確認された場合の対処法として下記が定められている。 【1】スタジアムに来場しない。 【2】タクシーなどで自宅またはホテルに送り出す。 【3】クラブの衛生担当者に連絡し、衛生担当者はマッチコミッショナーに報告する。 【4】新型コロナウイルス感染症が疑われる症状がある場合、チームドクターに相談の上、診療・検査などの適切な処置を行う。 【5】疑われる症状がない場合、適切に経過を観察する。 Jリーグが2週間ごとに実施している公式PCR検査を、サガンの選手やスタッフは7月31日に受けている。結果はJリーグに集約され、5日に一斉発表されるためにクラブ側からは事前に公表できないが、発熱した選手を含めた全員が陰性だった連絡がすでにサガン側へ入っていた。 こうした状況を受けて、サガンは衛生担当者を介してマッチコミッショナーへ状況を報告。その上でプロトコルに沿って、平熱に戻った当該選手をスタジアムへ来場させることなく鳥栖へ帰らせた。さらに後に混乱をきたさないように、一連の経緯を1日午後の段階でFC東京側へ説明している。 しかし、プロトコルに定められていないやり取りのなかで、ちょっとした行き違いが生じてしまったのか。すでに東京を離れている当該選手を、地元で週明けにPCR検査を受けさせるサガンの方針が、冒頭で長谷川監督が言及した「抗原検査を受けたい――」と受け止められてしまったようだ。 そして、FC東京の大金直樹代表取締役社長がJリーグ側へ問い合わせた結果、午後7時キックオフのサガン戦を予定通り開催するという回答を得た。