なぜJ2大宮対福岡は試合開始2時間前に急遽中止が決まったのか…偶然の回避に見えたJリーグPCR検査体制の盲点
先月下旬に名古屋グランパスで相次ぎ、7月26日のサンフレッチェ広島戦の中止へつながった4人の新規感染者も、第3回公式検査で陰性が確認されたDF宮原和也が発熱などの症状を訴えたため、グランパスが独自に実施したPCR検査で陽性が判明したことが発端となった。万全を期してさらに実施したPCR検査で、感染者がさらに増えた。 今回もFC東京戦へ向けて先月31日に都内に入った、サガン鳥栖の選手の一人が発熱。連絡を受けたJリーグがサガンの検査判定の前倒しを要請した直後に、U-19合宿における晴山の件が重なった。サガンは発熱者を含めた全員の陰性が確認され、FC東京にも連絡が入ったが、それでも長谷川健太監督が試合後の会見で「(試合を)やるべきではなかった」と問題を提起して波紋を呼んだ。 つまり、2週間ごとの公式検査体制では、新たな局面を迎えている新型コロナウイルスの現状に追いつけず、生じた“隙間”で感染してしまう選手やスタッフをとらえきれないことになる。 対策を問われた村井チェアマンは、JFAがU-19代表合宿で実施したSmartAmp法を新たに導入した上で、PCR検査と併用していく方法を「大至急、検討に入りたい」と明言している。 「例えば試合会場で試合開始前に検体を採取して、検査スピードが非常に速いSmartAmp法と、それで絞り込まれた選手やスタッフへPCR検査を実施する併用も十分にありえることを、今回のJFAの判断に学んでいます。トータルの実効性とコストなど、さまざまな情報収集を急ぎたい」 神奈川県衛生研究所と理化学研究所が開発し、7月から「検査の神奈川モデル」として簡易パッケージ化されたSmartAmp法は、判定結果がわかるまでに約1時間しかかからないスピーディーさが注目されている。U-19合宿ではPCR検査とのダブルチェックが行われ、濃厚接触者を出すことなく晴山を隔離できた。JFAの反町康治技術委員長も、SmartAmp法をこう評している。 「基本的には非常に信頼できる機器だ、ということで私たちも使っています」 陽性判定者が出たクラブに対して公式検査の頻度を増すためのガイドライン改定や、濃厚接触者を認定する全国各地の保健所と週末にスピーディーに連携を取るための関係作りなど、再び猛威を振るっている新型コロナウイルスに対処していく上での課題も山積しつつある。 「選手個々の行動履歴を追うと、ガイドライン通りにしっかりと対応してくれていると私は認識しています。それでも感染する可能性が高いというのであれば、やや抽象的な表現になりますが、脅威を認識しながら、十分に注意をしていかなければと思っています」 村井チェアマンは原点に立ち返ることの大切さも訴えた。5000人を上限とした現状の観客動員体制を最低でも今月いっぱいは継続していくなかで、2試合の中止をへて突きつけられた課題を乗り越え、サッカーに関わるすべての人々の安心安全を保証するための道筋を追い求めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)