なぜJリーグは政府指針が出る前に「8月1日以降観客50%動員」への制限緩和を見送ったのか?
異例の慌ただしさが緊急案件だったことを物語る。Jリーグは20日の臨時実行委員会で、8月1日から予定していた観客数の制限緩和を見送る方針を決めた。臨時実行委員会は午後4時からウェブ会議形式で行われたが、開催そのものがJリーグから発表されたのは開始わずか30分前だった。 「東京を中心に新型コロナウイルスの感染者が増加している状況と、8月1日が近づいてくる状況とを鑑みたときに、このタイミングがギリギリだと考えて臨時実行委員会を開催しました。今回の判断に至ったのもまだまだ予断を許さない状況のなかで、しっかりと対応を見極めながら前へ進んでいきたい、というJクラブの総意だと理解していただければ、と思っています」 Jリーグの村井満チェアマンは、実行委員会後にオンライン形式のメディアブリーフィングを実施。現状の「5000人か、あるいは収容人数50%の少ない方」を観客数の上限とする運用を継続する理由として、20日の168人を含めて東京都で12日間も続けて100人超が確認されるなど、大都市圏を中心に新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加している状況をあげた。 無観客試合改めリモートマッチとして、Jリーグは先月27日にJ2再開とJ3開幕を、今月4日にはJ1再開をそれぞれ迎えた。さらに10日からは前出の上限でファン・サポーターの観戦解禁に移行したが、すべては政府が定める「イベント開催制限の段階的緩和の目安」に沿ってきた。 その目安では、8月1日以降は観客数の上限が収容人数の50%に緩和されることが明記されている。新型コロナ対策を担当する、西村康稔経済再生担当大臣が緩和を見直す方向性に言及しているものの、20日の時点で文言の変更は施されていない。観客動員の指針として位置づけられてきた政府見解にとらわれることなく、Jリーグがて自主的な判断を下した背景には何があったのか。 ひとつは村井チェアマンが個人的に募らせた危機感がある。実行委員会に先駆けて、日本野球機構と共同で設立した新型コロナウイルス対策連絡会議で招聘している、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)を座長とする専門家チームへ、村井チェアマンは助言を求めている。 臨時実行委員会開催のアナウンスが直前のタイミングとなったのも、こうした動きがあったからだろう。いくつかの助言から感じた危機感を、村井チェアマンはこう説明する。 「まだ政府の(新たな)見解が出ていませんが、非常に危機感が高い、という感覚でした。具体的な感染者数もいわゆるオーバーシュート、例えば東京が1000人規模まで行くような危機感ではありませんが、それでも一定程度、いま現在の数字が引き続いていく可能性が十分に高いところであるとか、国民の感覚や感情が非常に慎重になってきている、というところもありました」