「父には『ごめん』『ありがとう』『死んだらこまる』すら言えませんでした」青木さやか、母の看取りと「人生会議」を語る
やってみてわかった。周囲にも「人生会議」を勧めていきたい
改めて、自分自身のこうした『人生会議』を振り返っていただくと、どのように感じますか? 「7年前に肺がんになり、今もおかげさまで元気ですが、がんになったことは私にとって大きなできごとでした。死ぬかもしれないと思ったとき、人生を変えたいと思って、それからは生き直しをしています。病気は怖い、手術も怖い、経済的にも怖いのですが、一番怖いのは『また病気になるかもしれない』という不安を抱えることです」 いま青木さんが生活の大切な柱にしているのは「不安を持たないこと」だそう。 「不安を持たないために、疲れてぱたりと寝られるよう忙しくしています。動物愛護の活動を続けていますが、この活動は24時間やることがあるので暇だと言っている時間がないうえ、動物たちに教えてもらうことがあります。たとえばですが、生まれつき顔つきの悪い犬はおらず、虐待されることで顔つきのわるい犬になります。弱っている動物に対して毎日同じ声掛けをして、ご飯をあげていると、ちょっとずつ顔つきが柔和になり、やがてご飯を手から食べるようになります。時期がたつと新しい家族のもとにもらわれていく、この変化がとても美しく、こう接するといいんだと日々教えてもらっています。私の人生に於ける考え方の基盤になっています」 人とのご縁も動物たちがくれると言います。愛護活動を経て知り合いになった人たちが1000人以上いるのだそう。助けたり、助けてもらえたりという関係性を作れる知り合いがこれだけいるのはすごいこと。 「家族や友人らと生き方について共有する『人生会議』の意義もわかりました。周囲にも勧めたいです。私は娘に自分の肺がんを隠していて、娘はネットニュースで母の病気を知り、『ママ、なんで隠していたの?』と言われました。娘には娘の意思があるのですから、言わないほうがいいという固定観念はこれからなくしていいのかもしれません。自分自身とも、仲のいい友人とも、『人生会議』をやっていけたらいいと思います」
興味はある、やったほうがいいけれど、実際どのように人生会議をすればいいの?
これから年末年始に実家に帰省する人も多いでしょう。この機会に、いままだ元気なご両親がどのように人生を過ごしたいのか、確認してみてはどうでしょうか。たとえば、厚労省『人生会議』のサイトには人生会議を行う助けとなるリーフレットが置かれています。実際にステップごとに行ってみる場合、読み上げながら一緒に話し合ってもいいのかもしれません。 『人生会議』、興味を持ったらぜひチェックしてみてください。
オトナサローネ編集部 井一美穂