『魔女の宅急便』角野栄子さんの子育て「母親は誰でも“魔法”を持っています」|VERY
自宅リビング。自身のテーマカラーだといういちご色の壁の前で ──お洋服やインテリアも色鮮やかで素敵です。 「以前は黒やグレー等無難な色を選ぶことが多かったんです。明るい色を着こなす自信がなかった。でも赤が似合いますねと言われてから気持ちが変わって。40代のころ、赤の中でも自分にしっくりなじむいちご色を自分の定番色に選びました。普段の生活の中で『自分の定番の色』を決めておくと迷わなくて便利なんです。小さい時は娘も定番色を持っていました。オシャレは昔から大好きで育児に忙しいころも、サンダルの甲をはがして好きな布に張り替えたり工夫しながら楽しんでいました」 ──いま育児の真っ最中の人に伝えたいことはありますか? 「動物も子どもが乳離れするまでは本能的に守らなきゃという意識になる。子どもを持つと人間が保守的になりますね。成長の早さや発達具合をやたらとよそのお子さんと比べてしまうこともよくあるでしょう。私自身もそうでした。当たり前のことですが出産前とは変化があって戸惑うこともあると思う。それはあってもいいし当たり前です。でも育児にかかる時間はそんなに長いものではないし何より子どもがいちばんかわいい時なので大切に過ごしてほしいと思います」 ──育児中のエピソードも作品に生かされているのでしょうか? 「小さなおばけシリーズに出てくるおばけの『アッチコッチソッチ』の名前は『あっちいってね、そっちいってね。こっちにかえるさんのお家がありました。白いタイルのお風呂に入りました。そうしたら体が真っ白になりました』なんて娘が小さいころ、自分で作って話して聞かせてくれたお話が元になっています。夫がデザインの仕事に使う色見本を見て『世のなかにはこんなにたくさん色があるんだ』と思って作ったみたい。その時私は作家として駆け出しだったのですぐに作品になったわけではありませんが、いつか書こうと心の中にとどめておいたことが後々役に立っています。『魔女の宅急便』の主人公キキも娘が中学生の時に描いた魔女のイラストを見てひらめいたものです。私はどんな人もひとつ自分だけの『魔法』を持っていると思っています。キキはほうきで飛べるという力を生かして、見えない世界を見、想像し工夫を重ねながら親元を離れてひとりで生きていく力を養いました。魔法の源にあるのは『想像する力』なのだと言ってもいいかもしれない。それは魔女のキキだけではなく誰でも持っているもの。目に見えない世界に思いを馳せ、心を動かすとその人の魔法が育っていきます。ぜひ皆さんも自分だけの『魔法』を見つけられたら、生き生き暮らしていけると思うのです」