『魔女の宅急便』角野栄子さんの子育て「母親は誰でも“魔法”を持っています」|VERY
受験勉強は意識しなかった
──お子さんの育児はその後いかがでしたか? 「私は子どもの教育には本当に疎くて塾に行かせた記憶もありません。他のお母さんたちが受験について騒いでいるのを見て『ああそんな時期か』と思うまで気が付かなかったんです。ただ、うちの娘は算数がどうにも理解できなかったようで、担任の先生が『リオちゃんは数字を絵だと思っているようです』と言ったんです。娘に話を聞いてみると、2×0はなぜゼロになるの?と。これは私もうまく説明ができませんでした。そんな時に独特な教育をするという学校の話を聞きました。それで小4の時に転校して、高校まで通いました。その学校で2×0=0が理解できたのです。『ぱっとわかった』と後で言っていました。いわゆる進学校ではないですが良い先生や友人に恵まれてこの時の選択は本当に良かったなと思っています。その後、絵の勉強がしたいという娘は文化学院に進学しました。ここは正規の大学ではありませんが、夫も大学時代にダブルスクールで通っていたんですって。国立大学にも通っていましたがそこよりもずっと面白かったそうなの。娘は50代になり、お話を書いたりイラストの仕事を続けています。私自身子どもの教育に大層なことは言えないけれど、いまでも子どもに合う学校に転校させたのは大正解だったと思いますね」
いまの30代の女性たちに伝えたいこと
──東京生まれ東京育ちの角野さん。なぜ鎌倉に引っ越ししたのですか? 「私は深川の生まれ。戦時中に集団疎開をしたり、移民としてブラジルに渡り東京を離れたことはありましたがそれ以外はずっと都内に暮らしていたのです。鎌倉の新居を選んだのは特別な理由はありませんが、暮らしてみると海がすぐそばにあって通り抜ける風が心地よくすっかり気に入りました。東京みたいに広くないのも歩いてまわるのにちょうどいい頃合いですね。スーパーはあるけれど元気な個人商店もまだまだ豊富で、八百屋さん、おいしいビストロ、散歩途中によく行くカフェなど行きつけがたくさんあります」