男らしさ、女らしさ…名作絵本に描かれた古いジェンダー観に「モヤッ」としたら、子どもにどう伝えればいい?
――絵本を否定するのではなく、子どもと一緒に考えて学びあうということですね。 ええ。それができるのが、ご家庭での絵本の読み聞かせのいいところ。それに「モヤモヤ」するのは、絵本だけの問題ではないですよね。子どもの目にもうつるこの社会が、まだまだジェンダーバイアスがかかったものであり、男性優位のものであるかということを含め、私たち大人は社会全体に気を配っていくべきだと思っています。 ■絵本には古いジェンダー観がたくさん描かれている ――昔ながらの名作絵本には、わりあい、固定化されたジェンダー像が描かれてることが多いように思われますが、それはなぜですか? 絵本の世界は、その当時の社会を表していますから、1970年代頃にたくさん出版された名作絵本の中には、ジェンダーバイアスが顕著に現れているお話も確かに多く存在します。 今、読んでみると「男らしさ」「女らしさ」に縛られた考え方や行動が描かれていると、批判的に思ってしまうかもしれません。でも、そうした絵本の中の家族観が、すべて悪いということではないと思うのです。 たとえば、国会のあり方ひとつ見ても、日本のリーダーに選ばれる人は、まだまだほとんどが男性です。オリンピックの報道一つとっても、男性につく枕詞は「豪快」、女性選手には「美しい」が定番のようについていたりもします。絵本だけでなく、あらゆるところにあるジェンダーバイアスがかかった表現について、疑問を持つことが大切なのかもしれませんね。 ――東條さんが講演などで扱っておられる「絵本におけるジェンダー」とはどのようなものですか? 私はもともと、大学で、発達心理学や読書の発達など、子どもの読み物について学んでいました。また、出版社勤務の経験や、学校図書館司書として長く働いていたこともあり、読書が子どもたちにどのような影響を与えるかということに関心を持っていました。 そんな中、この長い歴史の中で、絵本におけるジェンダーがどのように描かれてきたかを調べ、さまざまな国比較も行いながら、保護者や幼稚園の先生方に、絵本を読み聞かせるときに子どもたちの成長過程を含めて、ジェンダーについて考えてもらうための講座などを開催するようになったのです。 ――もし、子どもたちに、より早い段階からジェンダーの平等性について意識的になってほしいと思ったときは、どんな絵本を読めばいいのですか?