約2年ぶり国内世界戦に挑む井上尚弥に“見えない敵”…ドネアとPPV料金3960円にふさわしい「KOの仕方」
「絶対に世界チャンプになる。井上に言いたいのは、オレは、密林のプレデターではなく、モンスターハンターだ」 井上は、その挑戦者の威勢の良さが逆に嬉しそうだった。 「これくらい気合が入っていないと明日はいい試合にならない。みなさんの期待と想像を超える勝ち方をしたいので楽しみにして下さい」 世界が注目している井上が無名の格下タイ人と戦う理由が3つある。 「ボクサーにとって(一番の)モチベーションはリングに上がることだと思う。コロナ禍の状況で日本での試合、リングに上がれることが一番」 2019年11月にさいたまスーパーアリーナで行われたドネアとのWBSS決勝戦以来となる日本のリング。新型コロナ禍の影響でまだ収容人数の70%(約7000人)までという制限はあるが、ファンに成長した“モンスター”の姿を披露したいとの思いが強い。 しかも当日は、白のドレスコードが来場者に求められており、これまでのボクシング界になかった前代未聞の異空間が出現することになっている。 そして「プラス」として2つ目の理由に挙げたのが、次なる目標だ。 「先日、ドネアがいい勝ち方をした。来年春に向けてのモチベーションになる」 日本時間12日に米国でWBCのベルトを持つドネアが衝撃の左ボディブローで無敗の暫定王者を4ラウンドKOに葬った。一方のWBO世界同級王者のジョンリエル・カシメロ(32、フィリピン)は、計量をキャンセルして、同日に予定されていた同級1位ポール・バトラー(英国)との指名試合が中止になった。 計量キャンセルの理由は体重超過ではなく「ウイルス性胃炎」とされており、WBOはタイトルを剥奪せず、「10日以内に医師の診断書を提出」との条件をつけた。急遽、セッティングされた暫定王座決定戦をバトラーは拒否。もしカシメロの王座保持が認められれば、バトラーが再挑戦し、王座が空位となれば、王座決定戦を戦う方針を固めたとみられ、いずれにしろタイトルの行方は不透明。 だから井上は、「まだ正確な情報はハッキリ出ていない。そこにコメントをする必要はない」とカシメロ無視を決め込んだ。 大橋会長は「選択肢は2つある。優先順位はない」と、両にらみで構えているが、井上は「前から言っている4団体統一に向けて(今)必要なベルトを持っているのはドネア」と、ターゲットを再戦に燃える39歳のレジェンド1本に絞っている。 ハッキリと次なる宿敵の姿が浮かんでいるだけに、この防衛戦は、単なる通過点ではない。