計量キャンセルで防衛戦中止のカシメロWBO王座は条件付きで剥奪されず…バトラーが暫定王座決定戦
WBA世界バンタム級スーパー、IBF同級王者の井上尚弥(28、大橋)がターゲットにしていたWBO世界同級王者ジョンリール・カシメロ(32、フィリピン)と同級1位ポール・バトラー(33、英国)の世界戦が前日に急遽中止となった。11日(日本時間12日)にドバイのコカ・コーラアリーナで行われる予定だった世界戦の前日計量が10日に現地で行われたが、カシメロが計量をキャンセル。同世界戦のプロモーターである「プロベラム」が、SNSで「カシメロが計量を行うことができず防衛戦は中止になった」と伝え、バトラーは、同級10位のジョセフ・アグベコ(41、ガーナ)と対戦することが発表された。 カシメロ陣営のカットマンであるスティーブン・ルナス氏が、フェイスブックで「ウイルス性胃炎に悩まされていた」と報告するなど体調不良、体重オーバーによるキャンセルなど、複数のメディアの間で情報が錯そうしていたが、これらの緊急事態を受けてWBOは声明を発表。 カシメロ陣営の最高責任者が文書で計量をキャンセルした理由を「ウイルス性胃炎による体調不良で計量前日の午前二時にドバイのアメリカン・ホスピタル・ドバイに搬送された」と訴えたため、カシメロのタイトルは剥奪せず、バトラー対アグベコ戦をWBO世界バンタム級の暫定王座決定戦として認定することを明らかにした。 ただし、カシメロのタイトル保持には条件がつき、10日以内に医療診断書を提出して試合ができなかった理由を証明しなければならず、もし、その証明ができなければタイトルは剥奪され、今回の暫定王座決定戦の勝者が正規王者に認定される。 カシメロの体調不良については、米専門サイトのボクシングシーンが「報じられている医療診断には疑わしさも残る。カシメロは118ポンド(約53.5キロ)のリミットに達するのに苦労していたということが分かっている」とも伝え、権威のある「リング誌」が対戦予定だったバトラー陣営のジョー・ギャラガー・トレーナーの「調整は本当にうまくいっていたのでポールがカシメロと戦えなくなってとても残念だ。奇妙なのは(カシメロが)対戦を取りやめて、何か月も前にポールが挑戦者決定戦で対戦するはずだった選手(アグベコ)がすでにここにいて、試合に取り掛かる準備ができているということだ」とのコメントを紹介するなど、疑念の声は消えておらず、WBOもその証明を求めたと考えられている。 またバトラーと急遽、暫定王座決定戦を戦うことになったベテランのアグベコも最初の計量ではリミットをオーバー。制限時間内に再計量してようやくパスした。 カシメロは昨年4月に井上との3団体統一戦が決まっていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となった。その後、今年の8月にWBC世界同級王者、ノニト・ドネア(39、フィリピン)と統一戦を行うことが発表されたが、ドーピング検査の拒否などで中止となり、2階級制覇王者でWBA世界同級レギュラー王者だったギレルモ・リゴンドー(41、キューバ)と対戦して2-1判定で辛勝していた。 今回のバトラー戦は指名試合で10万5000ドル(約1190万円)で落札されカシメロは75%にあたる7万8750ドル(約890万円)を手にする予定だったという。 たとえカシメロが胃炎による体調不良を証明して王座を保持することが認められたとしても、暫定王者との統一戦が義務づけられると考えられる。井上との統一戦は、先延ばしになるだろう。 もともと井上陣営は、日本時間12日にWBC同級暫定王者のレイマート・ガバリョ(25、フィリピン)と統一戦を行うドネアを次戦のターゲットに定めており当面のプランに影響はない。ただ、4団体統一を目標に掲げているためドネアに勝ち、4つ目のベルトを取りに行く際にはWBOのベルトの行方が影響を及ぼすことになりそうだ。井上は14日に約2年ぶりの国内リングとなる両国国技館でIBF5位、WBA10位のアラン・ディパエン(30、タイ)と防衛戦を行う。