「告発文書を世に知らしめたのは元局長ではなく斎藤知事その人です」なぜ知事らの行いが法律違反といえるのか、兵庫県議会・百条委での解説全文(後編)
この百条委員会を内部告発への対応の見直しの契機に
この問題をめぐって、いま、世の中で多くの人が怒り、それはまるで沸騰しているかのようです。 声を上げた男性職員の、たいへんに不幸な結末が、ほかの職員を萎縮させるのではないか、兵庫県庁だけでなく、日本中のあちこちの職場で働く多くの人たちをして、内部告発の声を上げづらくさせるのではないか、と心配する声があります。 たしかに、知事や副知事の今回の不適切な対応がとがめられることなく、まかり通ってしまえば、県職員は、職場でおかしなことを見聞きしても、よほどの覚悟がない限り、それを公益通報することができなくなってしまうでしょう。パソコンを取り上げられて役職を外され、10年以上もさかのぼって、ありとあらゆる粗さがしの対象にされると分かっていながら、声を上げることができる人は、いません。こうした萎縮は、兵庫県庁に限らず、ほかの多くの同様の組織でも、生じるおそれがあります。その結果、あってはならないおこないが放置されてしまいがちとなる恐れがあります。 そのとき立ち上がったのがこの特別委員会です。 この特別委員会がこの内部告発にこのように真摯に対応しておられること、そのプロセスそのものが、分水嶺となって、模範となって、今後の日本社会で、正当な内部告発を真剣に取り扱うのが当たり前となること、私はそれを強く念じております。 公益通報者保護法というのは、とても地味で特殊な法律で、これまで世の中にあまり知られていませんでした。それが最近は、それについての解説がテレビのワイドショーで連日のように放送されています。冒頭に申し上げましたように、私は22年前から公益通報者保護制度についてライフワークとして取材・報道、研究にあたってきておりますが、ここまで、公益通報がお茶の間の話題になったことはかつてないことです。 政府において公益通報者保護法を所管する消費者庁は今年度、もともとこの法律の見直しのための検討会をスタートさせておりましたが、今週月曜日(9月2日)の検討会では「昨今の事例」がたびたび取り上げられ、新井ゆたか消費者庁長官が来年の通常国会での法改正への意欲を明らかにしました。 この特別委員会の調査のプロセスや結果を、多くの人々にとって、組織人にとって、日本社会にとって、多くを学んで、今までのやり方を点検し、直すべきところを直す、その契機にしたい、そう思います。