「告発文書を世に知らしめたのは元局長ではなく斎藤知事その人です」なぜ知事らの行いが法律違反といえるのか、兵庫県議会・百条委での解説全文(後編)
知事らの行為は公益通報者保護法に違反
もし、「公益通報」に該当するとすれば、それを理由としたその人に対する不利益扱いは禁止されます(同法5条)。告発文書送付を理由としたパソコン押収、圧迫的な事情聴取、県民局長解職、退職保留、懲戒処分はすべて、公益通報者保護法に違反する不利益扱いで、違法です。ただし、この違反に刑事罰や行政処分は規定されておらず、当事者が民事訴訟で処分取り消しや損害賠償などで救済を求めることができるのにとどまっている実情があります。 これに加えて、2022年改正の後の公益通報者保護法では、兵庫県は事業者として「公益通報者を保護する体制」を整備しなければならないと義務づけられています(公益通報者保護法11条2項、指針第4、2)。 具体的には、以下のような措置を義務づけられています。 ・公益通報者が不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置をとり、不利益な取扱いを把握した場合には、適切な救済・回復の措置をとる。 ・不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。 ・通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。 ・通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。 ここで保護すべき通報者には、1号通報だけでなく、2号通報、3号通報も含まれています。その上、かなりややこしいのですが、公益通報者保護法3条の保護要件を満たさなくても、この法律の2条の定義の規定で「公益通報」にあてはまる通報があり、これらの通報についても、事業者は、上に述べましたような措置を義務づけられています。 すなわち、真実相当性の要件を満たさない外部通報であっても、事業者は、通報者を特定しようとする「通報者探索」や、通報者を特定させる情報を必要最小限の範囲を超えて共有する「範囲外共有」について、それを防ぐための措置をとることを義務づけられています(11条2項、指針第4, 2)。 したがって、兵庫県が3月下旬、告発文書が外部に送られているのを知り、西播磨県民局長がその作成に関わっていると疑って、それを特定したのは、この義務への違反、公益通報者保護法11条2項への違反となります。つまり、兵庫県は、知事が先頭に立って、これら義務に違反する行動をとっている、ということです。