タイガースの近未来を左右しかねない衝撃人事…阪急阪神HDの株主総会で何が起こったのか?
村上ファンドに企業買収を仕掛けられ、”ホワイトナイト”として登場した阪急HDが阪神電鉄に救いの手を差し伸べてTOBに応じ経営が統合されたのが2006年10月。だが、その際、野球協約にある「経営母体の変更による新たな加盟料30億円」を阪急阪神HDはNPBから要求された。オーナー会議でも一度は決議。その中には、「阪急さんはブレーブスを身売りした前科がある」とあからさまに批判する声もあったという。 結局、阪神サイドが、実態として阪神が引き続き経営をすることを訴え、各所への説得に動き、手数料の1億円だけで29億円は免除されるに至ったのだが、その際、「球団経営は阪神に委ね阪急は干渉してはならない」「阪神タイガースの名を残す」などの覚書が交わされたという。ただし覚書そのものはオフィシャルなものでない。しかも免除された29億円のうち25億円は10年間球団を保有した後に返還される「預かり保証金」のためその覚書の効力は「10年間」との説もある。 だが、阪急サイドは、この方針を守ってきた。 ほぼ対等な人数構成でスタートした阪急阪神HDの役員から、この14年で阪神電鉄の役員は1人減り、2人減りしてきたが、常に阪神電鉄の会長、すなわちタイガースの最高トップは、そのメンバーに入ってきた。オーナーは、もちろんのこと球団社長がHDの取締役メンバーに入っていた時期もある。 「阪神が球団経営をする」との原則、”聖域”は守られてきたのだ。タイガースの1億円を超える大型補強や監督人事など規模の大きい決定事項については、角CEO、杉山健博・阪急電鉄社長ら阪急サイドの合意を得なければならなかったが、たいていのことは阪神主導で進めることが可能だった。昨年までで言えば、角CEO、杉山社長、秦社長、藤原オーナーの4人の合議制で、タイガースの大きな案件を決めてきた。藤原オーナーが原案を提案、或いは、藤原オーナーの意見が尊重されるという合議制だった。そのことを示すかのように、この日の株主総会でも最前列にこの4人が並んで座っていた。 だが、2年前から総合職の新入社員の採用がHDでの一括採用に変わるなど、阪急と阪神に人事交流が活発化し、グループの”阪急化”が顕著になってきた。タイガースの人間がHDの役員から消えることも、その流れに沿ったものかもしれないが、藤原オーナーがHDでの実権を失い、タイガース主導では何も決めることのできない可能性が高くなったのである。