「断水しても、決して洗浄タンクに水を入れてはいけない。なぜならば…」防災トイレ専門家が<バケツ洗浄>のコツを解説
2024年8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の大きな地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が一時的に発表されました。災害への備えで後回しにされがちな「トイレ」ですが、NPO法人日本トイレ研究所代表理事の加藤篤さんによると「発災後3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなる。だから水・食料より先にトイレ対応が必要」とのこと。そこで今回は、加藤さんの著書『トイレからはじめる防災ハンドブック 自宅でも避難所でも困らないための知識』から、今知っておきたいトイレの知識を一部ご紹介します。 【書影】トイレから防災を考えてみると、災害への正しい備えが見えてくる。加藤篤『トイレからはじめる防災ハンドブック 自宅でも避難所でも困らないための知識』 * * * * * * * ◆便器内に溜まった水の跳ね出しは汚水逆流の兆候 もし水洗トイレの便器の底に溜まっている封水が便器から跳ね出す現象が起きたら、排水管のトラブルによる汚水の逆流が疑われます。 排水管はつながっていて、汚水は自然流下で高いところから低いところへと流れていきます。しかし、排水管のどこかに詰まりや管の逆こう配などの異常があると、汚水がスムーズに流れずに溜まってしまうことがあります。 このような状態で上階から汚水を流すと、管内の汚水が行き場を失い、どこかからあふれることになります。 前兆として、まず管内の空気が逆流し、封水内からポコポコと空気が上がってきます。そしてそれが進行すると、封水の跳ね出しが起こります。 この現象は、大雨で浸水し、下水道や排水横主管が満水になっている場合に水洗トイレを流そうとした場合にも起きる可能性があります。 例えば、便器のフタを閉めておき、その内側が濡れていたら、汚水逆流の発生を疑いましょう。
◆停電時は散水栓から水を確保する 私たちの住戸への給水は、道路に埋設されている配水管から給水管を分岐して敷地内に引き込んで水を届けます。 低層住宅の場合は、そのまま住戸内の蛇口に水が送られますが、高層住宅は水道水圧のみでは圧力が足りないので、ポンプで増圧・加圧します。その際に、受水槽で貯めてから増圧・加圧する方式もあります。 つまり、ポンプを用いて給水している建物は、災害で停電するとポンプが動かなくなるので断水します。一方で、低層住宅は停電時も水が出る可能性が高いです。 ただし、水道施設から水を送る圧力が低下している場合は低層住宅であっても水が出なくなります。 ポンプを使用している建物の場合、停電によるポンプの停止で断水しているのか、水道施設や配水管の被災により断水しているのかを見極める必要があります。 なぜなら、ポンプが原因での断水であれば、敷地内には水が供給されているため、何らかの方法で水を確保できるからです。 ポンプ停止による断水かどうかを簡易にチェックするひとつの方策として、屋外で水を使うための給水口(散水栓等)から水が出るかどうかをチェックする方法があります。 ポンプを介する前の給水口から水が出るのであれば、地域への給水は機能していることになります。日頃から散水栓等の場所を確認しておきましょう。
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