なぜ3歳の皐月賞馬エフフォーリアが天皇賞・秋を制し4歳の3冠馬コントレイルが敗れたのか…横山騎手の手腕とスタートの誤算
もちろん3歳馬の“特典”でもある2キロの斤量差も生きた。それでも決定的とも言える着差に鹿戸雄一調教師は「初めての古馬との対戦でしたが、スタートが上手なので、前々でレースができると思って安心して見ていました。力で古馬を負かした感じ」と愛馬をたたえた。 何しろ3歳馬の勝利は今回、グランアレグリアを送り込んだ藤沢和雄調教師が管理していたシンボリクリスエス以来実に19年ぶり。弟子にあたる鹿戸師は「藤沢先生のところにお世話になっているとき、僕もクリスエスに少し携わっていましたが、素晴らしい馬でした。この馬も少しでも近づけたらと思っていました。藤沢先生には追いつけはしないんですが、少しは近づけたかなと思っています。レース後は”おめでとう”と声を掛けていただき、すごく嬉しかった」と感激の様子だった。 スポーツ紙での予想で、エフフォーリアを推していた元公営名古屋の騎手、吉田稔さんは、「実力通りに決まったのではないでしょうか。今年の3歳馬は強いし、エフフォーリアは勝って不思議なかった。コントレイルはスタートが良くなかったけれど、そこまで出遅れたわけではなく、位置取りはあんなもの。最後は追い上げてきたしさすがに力はある。グランアレグリアはもっと後ろから行くと思っていたので意外でしたが、G1だと2000メートルは長いのかも」と3強対決の結果を分析した。 最後は上がり3ハロン33秒0の末脚でグランアレグリアを何とかクビ差でかわしてエフフォーリアに迫る意地を見せたがコントレイルは敗れた。陣営のショックは大きかった。無敗の3冠を達成した後、昨秋のジャパンカップで女帝アーモンドアイに敗れて2着、今春も道悪の大阪杯で3着に終わり、これで3連敗。 矢作芳人調教師は「状態は良かったし、負けてはいけないレースだった。1番人気だったので申し訳ない。最後は差せるかと思ったが、2キロ差もあったし、相手も強かった」と敗戦の弁。 誤算はゲート入り後から2コーナー入り口までの競馬だろう。府中の東京競馬場の芝2000メートルはポケット地点からのスタートで、ちょうどオーバルコースの2コーナーからしっぽが垂れ下がったようなコース形態をしている。内枠が圧倒的有利で1枠1番のコントレイルには追い風になるはずだったが、スタートで後手を踏んだ。出遅れとまではいかないもののゲートがオープンした直後に一瞬ふらつき、隣のカデナと軽く接触したようにも見えた。致命傷ではないが極限の争いとなる3強対決ではダメージになった。