【ジャパンC】トラックバイアスから分かるチェルヴィニア〝真の能力〟
[GⅠジャパンカップ=2024年11月24日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝2400メートル] 内が伸びる芝、外差しが決まる芝…。馬場はまるで生き物かのように、日々変化する。そこから生じる馬場の傾向が「トラックバイアス」。朝から芝に足を踏み入れてコンディションを確かめるジョッキー、調教師…。彼らはそれが競馬の勝敗に影響を与えることを分かっている。当然、予想のファクターとしても軽視すべきものではない。当欄はトラックバイアスから〝レースの真実〟を解き明かし、買うべき馬、買うべきではない馬をあぶり出すのがテーマだ。 今年の秋華賞当日の京都芝コースのトラックバイアスはかなりの「内伸び」だった。秋華賞前までに行われた同日の京都芝・5レースにおいて1~3着馬が内ラチから何頭分外を回ったかのおよその平均値が以下のものだ。 1着馬=3・2頭目 2着馬=2・2頭目 3着馬=4・4頭目 2着馬の「2・2頭目」などはこれまでに見たことがないほどの少ない数値。外を回れば回るだけロスという状況だった。 そんな中、秋華賞を勝ったチェルヴィニアが直線で通ったコースは内ラチから5頭目。最もトラックバイアスの恩恵があり、距離ロスもない最内ではなかったものの、外を回ったわけではなく、前がすんなり空いたことからも実にスムーズな競馬ができていた。つまりは、トラックバイアスを考慮した上で上方修正も、下方修正もする必要がないということだ。走った見た目、時計そのままの評価でいい。となると、そこまでインパクトがあった勝ち方にも見えないのだが…。 近年、秋華賞を勝った次のレースでJCに挑戦した3歳牝馬といえば、2018年アーモンドアイ、20年デアリングタクト、23年リバティアイランド。これらと比較してみたい。 アーモンドアイの秋華賞は、内の先行馬が残る展開で大外ブン回しから直線、先頭まで7、8馬身差があった中、アッと言う間に捕らえてのV。リバティアイランドは4角手前ですでに先頭に並びかけ、直線そのまま後続を待たずに引き離す〝力技〟のV。この2頭に比べるとチェルヴィニアの勝ち方にはやはり圧倒的な迫力が足りない。どちからといえば教科書通りの競馬で馬場の真ん中からジャストのタイミングで追いだして勝ったデアリングタクトに似たタイプか。 このレースで最もインパクトが強かったのは2着ボンドガール。後方から直線大外(内ラチから10、11頭分外)を通って最速上がり(34秒1)を叩き出しての2着。改めてポテンシャルが世代トップクラスであることを見せつけた。年内休養というのは残念だが、来年のヴィクトリアマイル最有力候補とここで早々断言しておきたい。
東スポ競馬編集部