榊原委員長「みんなで車を造っていない」日野自動車会見8月2日(全文1)
1000時間時点の数値を125時間・1000時間・2000時間時点に振り分け
劣化耐久試験における不正行為について、分かりやすい具体例を示して説明いたします。お手元の図、あるいはスクリーンに映し出されている図をご覧ください。この図のうち、実際の測定データは右側の表であります。この表にあるように、2017年6月30日から2018年1月16日までの間、耐久試験が行われました。そして耐久時間0時間の時点で2回、耐久時間1000時間時点で8回、耐久時間2000時間の時点で4回の測定が行われていることが分かると思います。 これに対しまして、左側の表は劣化補正係数の算出のために用いられたものであります。右側の表から左側の表に矢印が出ておりますように、実際に測定したデータのうち、1000時間時点で測定した8回の数値を左側の表の125時間の時点、1000時間の時点、2000時間の時点に振り分けております。測定日も転記した先で実際とは異なる測定日、耐久時間に変更しておりました。 振り分けました右側の表の8回のNOx値は、おおむね規制値内の0.02グラム・パー・キロワット・アワー前後であり、この数値を3回の測定点に振り分けますと、エンジンを稼働させた時間を経過してもほとんど劣化しないとの結果が得られることがお分かりいただけると思います。また、その結果として推計される8000時間時点でのNOx値の数値も、規制値内に収まることになります。これが具体例であります。 次に、燃費に関する不正行為について説明いたします。燃費に関しては、オフロードエンジンでは不正行為は確認されておらず、オンロードエンジンについてのみ、次のとおりの不正行為が確認されました。
データ書き換えなどで、試験の適切実施を装った
重量車につきましては、2006年度から燃費に関する2015年度目標を達成した車両について、自動車取得税軽減措置が講じられることになり、以後、制度の変遷はあるものの、燃費の良い車両については減税措置が講じられたり、購入時に補助金が支出されるなどのインセンティブ制度が導入されました。そこで日野自動車では2005年11月、当時副社長を退任して技監となっていました元役員の指示をきっかけに、当時のE7規制対応の大型エンジン、E13Cなどについて、2015年度目標の達成を目指すこととなりました。 しかし、実際には2015年度目標の達成を、2015年度目標には大幅に未達、すなわち達成できていない状況にありながら、役員がその達成を強く求めるなどしたため、開発担当者らは2005年12月下旬ごろ、開発担当の専務取締役および副社長に対し、目標達成見込みであるという報告をしたものの、その後適切な対応をしないままでありました。 2006年4月、パワートレーン実験部の担当者らは、燃料流量計校正値を燃費に有利となるよう操作するなどの不正行為を行い、諸元値を達成したとの結果を得ました。その後のエンジン開発においても同様の不正行為が繰り返されたことが認められております。本問題発覚後に、日野自動車において検証したE13Cの諸元値は、実際の燃費の実力との乖離幅はスクリーンの表にあるとおりであります。E7規制からE9規制にかけて、乖離幅が次第に大きくなっていることが分かると思います。 次に、2016年問題について説明いたします。国交省は2016年4月、自動車メーカー各社に対し、認証取得時の排出ガス、燃費試験において、その実施方法に不適切な事案がないかを調査の上報告するように求めました。これに対し日野は、当時適用されていたE8規制について、その認証取得時の排出ガス、燃費の試験状況調査の上、不適切な事案はなかった旨の調査結果を報告しました。しかしながら、報告に当たり、E8規制対応時の認証試験データの一部について、存在が確認できなかったり、データから得られる結果と、認証申請時とが食い違っていたりするなどしたため、資料収集に当たってパワートレーン実験部の担当者は認証申請時に合わせた試験データを作出したり、データを書き換えるなどして、当時の認証試験が適切に実施されていたかのように装ったものであります。 これらの不正行為についての真因分析と、日野に向けた提言について説明いたします。当委員会は、本問題の真因を次の3つと考えております。1つ目は、みんなで車を造っていないこと。2つ目は、世の中の変化に取り残されていること。3つ目は、業務をマネジメントする仕組みが軽視されていたことであります。