注目集まる日銀次期総裁の金融政策 黒田体制最後の3月会合でサプライズ変更はあるか?
4月に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁の後任として、政府は元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示しました。現在の金融緩和政策は今後どうなるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】“一枚上手”だった日銀 今後の金融緩和は? 住宅ローンは? 政策修正めぐる5つの「Q」
総裁が誰だろうと「突然」になるYCC修正
金融市場では日銀の次期総裁候補である植田氏による金融政策の舵取りを注視しています。このまま総裁就任となれば、植田体制で初となる4月27~28日の金融政策決定会合は極めて大きな注目が集まるでしょう。現時点では、4月の決定会合で金融政策の「点検」が予告され、その結果を踏まえて政策修正に踏み切ると予想する向きが多い印象です。 ここで一点注意しておきたいのは、黒田総裁にとって最後となる3月の金融政策決定会合における予想外の政策変更です。というのも、イールドカーブコントロール(以下YCC、短期金利をマイナス0.1%、10年金利を0%程度に誘導する)は、事前に政策変更が予想されると、長期国債の売りが膨らんでしまい、長期金利の乱高下を招いてしまうという特性があるからです。昨年12月のYCC修正(10年金利誘導目標の変動幅拡大)がそうであったように、市場参加者がYCCの修正を予想しておらず国債売り圧力が小さい時こそ日銀が動き易い、という特性を再認識する必要があります。 12月の政策修正はそれが予想外であったため、市場関係者から「日銀はコミュニケーション不足」と批判を浴びました。そうした経緯もあって、次期総裁に「市場との丁寧な対話」を求める声が多いのは事実ですが、YCCの修正・終了に限っては別問題でしょう。YCC修正・終了は誰が総裁であろうと「いきなり」になるのが必然と考えられます。
難しいYCC解除に黒田総裁が目処をつける?
その点、次回3月の決定会合はYCC終了の好機に思えます。黒田体制において最後の会合であるほか、年度末ということもあり政策変更を予想する向きは現時点で多くありません。黒田総裁は、賃金上昇を伴った物価上昇を確認する必要があるとして、これまでYCCの修正観測を封じてきた経緯がありますが、最近は大企業を中心とした賃上げ報道が目立ち、労働組合側の賃上げ要求も強気化していることから、春闘の結果判明を待つ必要性も薄れています。 YCCは解除の難しさが広く認識されており、次期総裁はその「片付け」を担う役回りと認識されていますが、黒田総裁がそれに目途をつけてから引き継ぐという可能性は意識しておく必要がありそうです。