「付き合わなかった人って、綺麗なままでいてくれる」映画監督・枝優花、『パスト ライブス/再会』を語る。
ゴールデン・グローブ賞5部門ノミネート、2024年度のアカデミー作品賞にもノミネートされた今期大注目の映画『パスト ライブス/再会』。4月5日の日本公開を前に、フィガロジャポン主催の特別試写会&トークショーが開催、レポートをお届けする。 ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会。ふたりが選ぶ、運命とはーー。 トークショーの登壇者は映画監督、写真家の枝優花さんと、映画評論家の金原由佳さん。枝監督は2017年、初の長編監督作『少女邂逅』がロングランヒットを記録、海外映画祭でも高い評価を受けた。さまざまなアーティストのミュージックビデオ撮影や写真撮影も手がけ、 現在最新監督ドラマ「瓜を破る~一線を超えた、その先に」がネットフリックスで配信中だ。聞き手を務めた金原さんは、これまで2000人以上の映画人のインタビューに携わり、フィガロジャポンをはじめキネマ旬報、朝日新聞などの映画評、そして劇場パンフレットの執筆なども担当。枝監督とは『少女邂逅』撮影時のインタビューで知り合い、その後もトークショーなどで「縁」が続く関係性だ。
金原 皆さんご覧になって、ご自身の年齢、性別、キャリアでだいぶ感想が違ってくるんじゃないかなと思います。多分10代、20代の方だと「なんでキャリアを優先させるんだろう」って思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、私のように50代になるとキャリアは絶対捨てられないっていう。枝さんはちょうど登場人物たちと同じ30代で、 まさにご自身のキャリア形成を考えながら人生をどう歩むかっていうのが、リアルな題材かなと思ったんですけど、いかがでしょうか。 枝 そうですね、観る前は、もう少しロマンスに振った映画なのかなって思ってたんですけど、観てみたら案外ドライだったりとか、考えさせられてしまったり、いい意味で意外性があって。私のキャリアも、もう新人とは言われなくなってきて、これからどうするかっていう部分と、 でもやっぱり仕事をすればするほど、仕事だけじゃ仕事は回らないっていう感覚もあって......。プライベートとかもしっかり、 人生を豊かにしないと、私たちのような仕事はおもしろくなくなるという葛藤があって。20代前半の頃は仕事一筋でがむしゃらにやることが使命だったんですけど、 そうじゃないぞって思い始めてきた時、この映画はその真っ只中な感じもあるな、と思って観ていました。