「総理、万博延期のご判断を」高市早苗氏の“異例の進言”なぜ 自民党総裁選を控え「ポスト岸田」と現職閣僚のはざまで続く苦悩?
今年1月、岸田内閣に小さな衝撃が走った。高市早苗経済安全保障担当相(衆院奈良2区)が、2025年大阪・関西万博の延期を岸田文雄首相に迫ったからだ。折しも元日の能登半島地震発生で、万博の会場建設が震災復興を遅らせるとの投稿がインターネット内で燃え上がっていた。高市氏の真意はどこにあるのか。言動をたどってみれば、9月の自民党総裁選で「ポスト岸田」をうかがう姿勢と、岸田首相を支える現職閣僚の立場との間で迷える様子が浮かぶ。(共同通信=広山哲男) 「次期総裁」石破氏が首位 2位小泉氏、首相は6位
▽次の首相を狙うが故の高い注目度 高市氏の発言が、なぜ物議を醸すのだろう。背景には、2021年の自民党総裁選に出馬し、善戦したと受け止められたこと、そして今年の総裁選に、既に意欲を示しているという事情がある。 「また戦わせていただく」 高市氏が総裁選再挑戦に言及したのは昨年10月3日にさかのぼる。BS番組に出演し、視聴者からの「総裁選に向けて仲間づくりは進んでいるか」という質問を投げかけられ、戦う姿勢を明確にした。 総理・総裁の座を4人が争った2021年の前回総裁選。国会議員票と、党員・党友投票による地方票を合わせた得票総数は、岸田首相の256票、河野太郎氏の255票に次ぎ、高市氏は3位の188票だった。4位の野田聖子氏63票を大きく上回る。しかし先行する2人には約70票差をつけられ、決選投票進出はならなかった。 善戦というのは高市氏が無派閥にもかかわらず188票を集めたから、だけではない。国会議員票で岸田首相の146票を次ぐ2位の114票を獲得したという理由が大きい。3位河野氏の86票を30票近く上回った。
議員票には安倍晋三元首相の動きが大きく貢献した。高市氏に投票した中堅議員はこうを明かす。 「安倍氏は自民党最大派閥である清和政策研究会(当時は細田派、現安倍派)の議員らに対し、猛烈に高市氏支持を働きかけた」 総裁選後に誕生した岸田政権で、高市氏は自民党政調会長に起用され、直後の衆院選の政権公約作りを担った。今も閣僚を任されている。その高市氏が今年の総裁選に照準を合わせており、党内に波紋をかき立てているというわけだ。 ▽影響力誇る「後ろ盾」の安倍元首相、突然の死去 だが3年前の総裁選以降、高市氏の戦う準備が進んだとは言い難いのが実情だ。 順風に見えた局面が変わったのは2022年7月8日。安倍氏が参院選の応援のために訪れた奈良市で街頭演説中、銃撃されて死去した。高市氏は思わぬ形で後ろ盾を失うことになる。 元々、原稿執筆や政策研究に充てる時間を重視し「他の議員との付き合いが淡泊」(周辺)と言われるように、高市氏の課題の一つは仲間づくりにあった。清和政策研究会に以前所属した経歴はあるものの、前回安倍氏の一声に応じた議員たちが、安倍氏亡き次の総裁選で高市氏を再び推す保証はどこにもない。