「総理、万博延期のご判断を」高市早苗氏の“異例の進言”なぜ 自民党総裁選を控え「ポスト岸田」と現職閣僚のはざまで続く苦悩?
保守団結の会で代表世話人を務める高鳥修一衆院議員は、総裁選で高市氏を支援するのか記者団に聞かれると含みを持たせた。 「思想信条が近い人を応援するのは自然なことだ」 ▽岸田首相に相対して政府方針転換を突き付ける これに先立つ1月16日、首相官邸。高市氏は岸田首相に向き合うと、こう切り出した。 「復興を最優先にしてほしい。万博の延期や縮小をご判断いただけないでしょうか」 大阪・関西万博よりも能登半島地震の復旧・復興に人手や資材を集中させるべきだという直言だった。 ネット上で、万博優先により復旧が遅れるとのうわさが飛び交う中での高市氏の直接行動。閣僚の担務として万博は所管外だ。万博推進は政府も旗を振ってきただけに「高市氏が反旗を翻したか」と党内外に映った。 進言への対処を迫られた岸田首相は翌週の22日、斎藤健経済産業相を官邸に呼び、復旧・復興に支障が出ないよう万博関連の調達を進めるよう指示した。資材の需給を把握し、正確な情報を提供することも求めた。
高市氏は27日になって、岸田首相とのやりとりを動画投稿サイトで暴露した。2020年に開幕予定だったアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ万博も新型コロナウイルスの流行で1年延期されたと紹介し、能登半島地震を理由にした大阪・関西万博の延期は国際社会の理解を得られるとの持論を展開した。 ▽広がる波紋、矛を収めて釈明 高市氏の言動は、東京・永田町や霞が関に衝撃を与えた。報道各社が一斉に報道。現職閣僚からは「政府一丸で万博準備を進めているのに理解に苦しむ」と首をかしげる声が上がった。 政府のスポークスマン役、林芳正官房長官は1月29日の記者会見で高市氏発言への見解を聞かれ、「復興に支障がないようにという趣旨だと認識している。それは政府方針であり、閣内不一致とは認識していない」とかわした。その上でこう付け加えるのも忘れなかった。 「開催を遅らせる必要があるとは認識していない」 渦中の人となった高市氏は翌30日の記者会見で発言の真意を問われ、万博関連工事に携わる事業者から陳情が寄せられたためだと説明した。奈良県選出だけに万博関連工事を担う関西経済界にもパイプを持つので、実情をありのまま首相に伝えたのだと言いたかったようだ。会見では改めて、万博、復旧の両事業を受注した企業の声だとして「資材や人手が不足して大変な状況だ。万博は少し延期した方が良いのでは」と紹介する形で問題提起した。