「フェムテック」の生みの親たちが語る、その未来。
近年さまざまなアイテムが登場し、盛り上がりを見せている「フェムテック」。女性の心身の健康課題をテクノロジーで解決するプロダクトやサービスを指すこの言葉の生みの親が、デンマーク出身の起業家イダ・ティンだ。 イダは2012年、ドイツ・ベルリンを拠点に生理周期管理アプリを開発する「Clue」を共同創業。Clueはいまや世界190カ国に1100万人のユーザーを抱えるまでに成長し、イダは世界でフェムテックの重要性を積極的に発信している。 2月9~11日まで東京・六本木で開催された「Femtech Fes!(フェムテック・フェス!)」に参加するため初来日したイダ。本記事では、彼女の起業の物語とフェムテックという言葉が生まれた背景を聞いたインタビューとともに、「フェムテック・フェス!」の生みの親、fermata(フェルマータ)CEOのAminaとの対談をお届けする。
自分の出産に主体性を持つことの意味。
――イダさん、あなたの経歴にとても興味があります。Clueを始める前は母国デンマークでお父さんが経営していたバイクショップを手伝っていたそうですね。 イダ・ティン(以下、イダ) 私がどうやってモーターサイクル(バイク)の世界から女性のサイクル(周期)の世界へ入ったかを知りたいんですね(笑)。 そもそもは、(子どもの人数や出産の時期を考える)家族計画にはどうしてイノベーションが生まれないのだろう、と疑問を持ったことがきっかけでした。16歳から異性と付き合い始め、妊娠しないように気を付けていたので、自分自身にとって排卵のサイクルを知るのは大切なことだった。 それに、子どもの頃から両親とバイクで世界中を旅して各地の女性の生き方を見てきたから、女性たちが自分の出産に主体性を持つことは、自分の人生をどう構築するかを決める本当に軸となる部分だと感じていたんです。 人間は月に降り立ったし、インターネットだって発明したのに、女性が妊娠しやすい日を知る方法がないなんて。もし簡単にそれがわかれば、世界が変わる。それなら私が作ろう、と。 私は医師でも、エンジニアでもなく、起業家になるために必要な技術はないけれど、アイデアだけはありました。本当はハードウェアを作りたかったんです。唾液中のホルモンを測定することで、生理の周期を正確に把握できるというもの。自分の排卵日を知れば、いつ妊娠しやすいのかが自分でわかる。 一緒に作ろうと言ってくれる人との出会いがあって、その後にもう1人、さらにもう1人と出会い、4人で会社をスタート。ハードウェアを作るのは大変なので、まずは生理を記録できるアプリを作ってユーザーを獲得し、市場を把握したらどうかというアイデアが出ました。それから10年、生理周期を管理する「Clue」はFDA(米食品医薬品局)に登録された世界初のデジタル避妊デバイスになったというわけです。 ――あなたは周囲を巻き込んでいくのが得意なんですね。仲間を集め、モチベーションを高めて、チームを作っていく。 イダ そうかもしれない。起業したい人は、まずは難しい課題に取り組むのがいいと思う。世の中の小さな問題を解決するために起業するのも、大きな社会問題を解決するために会社を興すのも、仕事という点では変わりはない。けれど、より大きな課題に取り組むほうが、同じように考える人たちが集まり、仲間になってくれやすい。みんな世の中にインパクトを与えるようなことに取り組みたいから。私の場合もそう。みんな大きなストーリーの一部になりたいものですよね。