なぜ松山英樹は全米OPで17位タイに敗れたのか?
男子ゴルフの2020-21シーズンのメジャー初戦、全米オープンの最終日が20日(日本時間21日)にニューヨーク郊外のウィングド・フットGC(パー70)で行われ、日本男子初のメジャータイトル獲得が期待された松山英樹(28、LEXUS)は「78」と崩れ、通算8オーバーの17位タイに終わった。 最終日に「67」と唯一アンダーパーで回り、4日間を通じてこれも唯一、一度もオーバーパーを叩かなかったブライソン・デシャンボー(27、アメリカ)が通算6アンダーをマーク。スタート時点で2打差をつけられていたマシュー・ウルフ(21、アメリカ)を逆転してメジャー初優勝を飾った。 全米屈指の難コースを舞台にした戦いで、第3ラウンドを終えて通算イーブンパー。首位に5打差の4位タイという好ポジションから、逆転優勝への期待を背負って最終組のひとつ前で最終日をスタートさせた松山の歴史的な偉業への挑戦は、最初の4ホールで実質的に幕を閉じてしまった。 1番パー4(455ヤード)でいきなりダブルボギーを叩くと、2番パー4(477ヤード)、3番パー3(231ヤード)、4番パー4(453ヤード)と3連続ボギーで5オーバーにまで後退。6番パー4(321ヤード)でこの日唯一のバーディを奪うもリズムは戻らず、1メートルのパーパットを外して思わず天を仰いだ8番パー4(490ヤード)に続いて、後半にも3つのボギーを叩いて4日間の戦いを終えた。 「疲れました」 そのひとことにすべてが集約されていた。
デシャンボーを除いた全員が苦しめられた強風と硬さを増した高速グリーンに、松山も例外なく牙をむかれた。例えば前半9ホール。穏やかな風だった第3ラウンドはパーオンを7度もマークし、そのうち4ホールでバーディを奪ったが、最終日のパーオンはわずか2度。ティショットは左右にぶれてフェアウェーをとらえられず、武器にしていた正確なアイアンショットにもことごとく狂いが生じた。 第3ラウンドの最後の4ホールを振り返ったときに、松山は「少しショットが暴れてしまい、スコアにそのまま直結してしまった」と気になる言葉を残していた。実際、15番パー4(424ヤード)で2オンを逃してボギーにすると、17番パー4(500ヤード)はティショット、セカンドをラフに入れた上に3打目をバンカーに打ち込み、3日目にして初めてダブルボギーを叩いていた。 ホールアウト後のインタビューを終えると、そのまま練習場へと直行。日が暮れかかってもドライバーとアイアンを打ち込み、スイングに生じた狂いを修正しようと励む姿があった。松山自身は「まだ今日(第3ラウンド)だったのが救いかな」と気を取り直していたが、3日目までの戦いで大きく消耗してしまった、特にメンタル面を回復できないまま最終日を迎えた可能性も否定できない。 ピンが切られる位置や初日から日を重ねるなかでより深く生い茂ったラフを含めて、ただでさえコースの難易度が増すメジャーの最終日。そこへパッティングの軌道にまで影響を及ぼす強風が吹き荒れたなかで、松山が抱えてきた課題が露呈してしまった点も否めない。2014年からアメリカのPGAツアーを戦ってきたなかで、松山はパッティングへの苦手意識を払拭できずにいる。 2019-20シーズン(9月8日のツアー選手権終了時までの約1年間の集計)の平均ストローク数で、松山は69.766の14位につけている。これが平均パット数だと松山は1.755の73位タイにまで後退してしまう。肉体改造をへて世界屈指の飛ばし屋へと変貌を遂げたデシャンボーの平均ストローク数は69.241の7位であり、平均パット数も1.726の16位タイと小技でも上位につけている。