奄美大島のマングース根絶、多難な道のりと外来生物のこれから
その後2005年に外来生物法が施行され、予算規模を拡大できたことが転機になりました。専従の防除チーム「奄美マングースバスターズ」を立ち上げ、林内に綿密にわなを配置するための体制が強化できたのです。私自身は、一時期転勤で奄美大島を離れていたのですが、赴任先の沖縄でもマングース探索犬導入にも関わりました。
―防除事業が始まった当時の反応はどのようなものだったのでしょう。
島内ではマングースに対する危機感が共有できていたと思います。マングースの分布が広がった場所では、あっという間に在来種の姿を見かけなくなりましたから。ただ、生態学の学会などに行ってみると、奄美大島みたいな大きな島で外来種の根絶など無理でしょうと言う人ばかりで、大学の研究者などからも「無駄だから早くやめたら?」といった反応があったのも事実です。本当に何回も、何人もの生態学者に言われましたよ。
―そんな中、防除はどのように進められたのでしょう。
マングースバスターズが中心となって、島内のほぼ全域に多いときで約3万5000個の捕殺わなと約300台のセンサーカメラを設置しました。わなの設置地域拡大とともに、貴重な在来種の混獲も起きてしまっていたので、それをできる限り防ぐ目的でバスターズとともにわなの改良を重ねました。メンバーはそれ以外にも、探索犬の導入時にハンドラーの勉強をするなど、使命感を持って熱心に取り組んでくれました。 もう1つ重要だったのが、国立環境研究所(国環研)の深澤さんをはじめとする多くの研究者の存在です。特に深澤さんは、国環研に入る前からプロジェクトに関わっていたこともあり、現場の取り組みを理解してくれていたことが大きい。バスターズが蓄積してきた日々の作業結果を入力した膨大なデータも、本当にわかりやすく整理解析し説明してくれましたし、良き相談相手でした。データをもとにわなを仕掛けるべき場所の提案や、その評価を繰り返ししてもらったことで、効果的に防除活動が進められたと思っています。