GAFAを生んだ「源流」はなぜ米国で生まれたのか、カギとなる「ある二面性」とは
ハイテク株に起きた「バブル崩壊」
これに符合するかのように、新興ハイテク企業が集まるナスダック市場の株価高騰が起きた。2000年2月のピーク時におけるナスダック総合指数は、景気拡大が始まった1991年3月末と比較すると9.7倍にまで高騰した一方、伝統的な企業が多く含まれるNYダウは、ピーク時(1999年12月)でも同3.9倍の水準にとどまっていた(図表2)。 新興ハイテク企業に対する期待がこの時期著しく高まったことを物語っている。その後、景気が減速し始めた2000年後半から2001年9月のテロ事件前まで、NYダウが1万~1万1千ドルのボックス圏内で推移していたのに対し、ナスダック総合指数はピーク時の4割以下にまで急落した。 この間の株式市場の動きは、典型的なバブルの形成とその崩壊を鮮明に描いている。
ITは「革命」か「バブル」か
「生産性論争」の過程で取り組まれた実証分析の結果から明らかなように、デジタル技術への集中的な投資によって、米国経済が1980年代までの長期停滞を脱したことは紛れもない事実だ。 その一方で、ネット関連の新興企業に対する過剰な期待が株価の高騰を招き、株式市場にバブルを生み出したことも、また確かな現象と言えるだろう。まさに「ITは革命でもあり、バブルでもある」ことを如実に物語っている。 このITバブルの形成過程では、背後にどのようなメカニズムが働いていたのだろうか。それは、この時期だけの特殊なものだったのか、それとも、イノベーション時代に一般化できるものなのか、興味は尽きない。この点は回を改めて考察しよう。
〔参考文献一覧〕
執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦