GAFAを生んだ「源流」はなぜ米国で生まれたのか、カギとなる「ある二面性」とは
AIブームに沸く株式市場ではバブルへの警戒感も顔をのぞかせている。何が起きるか分からないイノベーションの時代にはバブルがつきものだ。これまでのインフォメーション・エコノミーを振り返ると、ニュー・エコノミー論争に沸いた米国でも、ITブームの過熱が株式市場のバブルを生み、それが弾けてIT不況に陥った。当時の動向からは何が読み取れるのか、AI時代を展望する際の手掛かりを探ってみよう。 【詳細な図や写真】米国では1990年代終盤のドットコム・ブームでデジタル投資が急増した(Photo/Shutterstock.com)
ITブームに見る日米の「相違点」
イノベーションの時代には新ビジネスが次々と勃興する。そのブームがやがてバブルを引き起こすのは避けがたいようだ。 ECB(欧州中央銀行)は2024年11月に公表したFinancial Stability Reviewの中で、AIブームによる特定企業株への投資集中にバブルの可能性があるとの懸念を示した。 「ITは革命かバブルか」―ニュー・エコノミー論争が白熱した1990年代も、このテーマをめぐり侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が交わされた。 前回触れた2000年前後の日米同時ITブームとIT不況は、イノベーション時代のバブルとその崩壊を物語る典型例だ。1990年代終盤のドットコム・ブームで米国のデジタル投資は急増したが、2001年第1四半期には前期比で10年ぶりにマイナスに転じた。 この失速は、米国市場の収縮→アジア地域での米国向け生産縮小→日本からのアジア地域向け生産財・資本財の輸出減→日本の生産・投資の縮小という経路で、すぐさま日本に波及した。IT産業のサプライチェーンが両国間で密接につながっていたからだ。 ただし、その性格は両国でかなり異なっていた。デジタル投資の経済効果は、「長期的」な成長の基盤となる「生産性」への影響と、デジタル投資向け生産の変動が生み出す「短期的」な「景気」への影響の二面で表面化する。 ITブームとIT不況で見られた両国経済の相違点は、この二面に整理すると理解しやすい。