「SNS×政治」で仲良かった人と疎遠になる…宇野常寛さんに相談したら「50年以上前に結論は出ている」と言われました
そして、本題へ…
天野: ただ、なんで政治的に意見がわかれたときに、そこまでクリティカルに人と分かり合えなくなるのかなって思ってて… 宇野さん: あの、若干話がかみ合ってない気がするんだけど… そもそも今言ってる友だちというのは、飲み会に行って好きなコンテンツの話をするとか、フェスの感想を言い合うとか、業界の愚痴を言い合う相手みたいなことを言ってると思うんだけど、そういったやつらは人生に必要ないと思う。 だって、人生でそういった飲み会トークがプラスになったことって本当にある? 失ったもののほうが絶対多いと思うよ。 天野: じゃあ、宇野さんが自分の人生に必要だと思う友だちってどういう人なんですか? 宇野さん: 「こいつと出会ってなければ絶対こういうことは考えなかった」とか、自分では絶対にたどりつけない世界を見せてくれる人。 「この人と話していると自分の考えが予想外の方向に伸びていく」…そういった人かな? 「自立した個として、お互い尊重し合える」みたいな関係だよ。 天野: はい。 宇野さん: 共同性を確認するための飲み会で、本音を確認し合って「俺たちは仲間」みたいなのって「質的」なものじゃなくて「量的」なものなんだよね。誰でもいいんだと思う。 天野: …たしかに、取材の流れで迎合というか…してしまったんですけど、そういう友達が本当に大事で必要だとは、僕も思ってないかもしれないです。 宇野さん: 思ってないでしょ? 大人って、遊ぶ=飲み会じゃん。それがあったほうが元気に生きられるのかもしれないけど、僕は(飲み会は)本当にたまにでいいと思ってるんだよ。 天野: 共通性を確認するための“薄い飲み会”は必要ないと思うんですけど… たとえばめちゃくちゃ「これはブッ刺さる映画だ」みたいなのを観て、「この話ができる人と、飲みながら語り合いたい」みたいなときってあるじゃないですか? 宇野さん: あるある。 天野: 「学生のころの自分だったらめちゃくちゃ刺さっていたであろうコンテンツを観たとき」に、これをいったい誰と共有できるんだろう?みたいな… そういう相手がいないのかもと思ってて。 宇野さん: それは、「サイバーエージェントに文化的な人が少ない」という問題なんじゃないの? (爆笑) 宇野さん: これはさすがにちょっと怒られそう(笑)。すごい偏見を喋りました。全世界のサイバーエージェント関係者にお詫びします…(笑)。 天野: まあその…文化的というか…また別の文化があるということなのかもしれないですけれども。 宇野さん: あのさ、僕、今日初めてこのビル(AbemaTowers)に来たんだけどさ。 天野: はい。 宇野さん: やっぱ、似た雰囲気の人多いよね。 天野: ああ~、そうかもしれないですね。 …っていうかそうですね。 宇野さん: そうでしょ? それが問題なんだと思うよ。 つまり、イケてるIT系の人たちが、キャラをある方向に固めていることに問題がある。 自分たちの企業文化を中途半端に大事にするがゆえに、中にいる人のキャラを狭めてしまっている問題。 天野: …なるほど。 ただ、同質性があるって強いと思うんですよね、会社として。 宇野さん: それって経営者とかが考えることでしょ。 勤めてる社員としては、仕事で自然と知り合う人が一定のタイプに限られるっていう問題が起きてるんだよ。 人間って、裸眼だと“共同体にまみれてしまう”んだよね。 自分がいつの間にか取り込まれている文脈や物語に気づけない。 天野: まさにそうなってますね… 宇野さん: だから理性を働かせて、眼鏡をかけて、自分が依存している共同性に自覚的になって「どう自分をずらしていくのか」を、戦略的に考えなきゃいけない。 普通に生きてたら、「太陽が地球のまわりを回ってる」ようにしか思えないじゃん。でも、観測してそのデータを計算すると、はじめて「地球が太陽のまわりを回ってる」と分かる。そういう話だと思うんだよ。 だからこそ、コミュニケーションの様式を変えていくといいんじゃないかと僕は思ってる。 天野: 会社の人と飲み会に行って、何かの悪口をめちゃくちゃ言ってるつもりはないんですけど… ただ、「それは同質性の確認作業に過ぎないかもしれない」と。 宇野さん: 「私はあなたにお腹を見せることができます」という確認の儀式であってね。 別に飲み会じゃなくてもできるし、そういったものに依存してると、もっと大事なものを失うと思うんだよね。 日本企業の弱さってそういうところだと思うよ。いつまでたっても人間関係至上主義で、インパール作戦みたいなことをやっている。 ※インパール作戦…第二次大戦中に、旧日本軍が精神論から補給を軽視して甚大な被害を出した作戦 宇野さん: それって、彼らの目的が仕事をすることじゃなくて、人間関係を確認して安心することだからなんだよね。 そういった文化から抜け出していくことが大事で、そのためにはまず「自分が所属している共同体の文脈に汚染されてないか」。…もちろん絶対汚染されてるんですよ、汚染されない人間なんていないんだから。 だからこそ、理性を働かせて自分で“キャンセル”する努力っていうのをすべきだと思う。 今の会社では、基本「政治なんてダサい」って人か、“冷笑系”のどっちかが多いと思うんだよ。身のまわりに。 具体的な投票行動よりも、むしろそこを見たほうがいい。「まわりがこうだから自分もこうなっちゃう」っていう汚染を、意図的にキャンセルしていかないとどっかで自分がキツくなっちゃうんだよね。膿のようなものが心のなかに沈殿していって、自分がつらくなってくる。 もちろんそのほうが楽で、流されていくって人のほうが多いのかもしれないけどね。 今がそういうタイミングなんじゃないの? 『新R25』を7年間やってきて。 天野: そうなのかもしれないです。 宇野さん: そうでしょ? 「天皇の旗を振っていたのにマッカーサーの旗を振り出した」んじゃなくて、「何も考えずに天皇の旗を振っていたやつらだからこそマッカーサーの旗を振った」わけ。 人間って放っておくとそれがデフォルトなんだよ。 でも、モノをつくる仕事って、それだとどこかで詰まっちゃう気がしていて。 天野: はい。 宇野さん: ずっと同じマーケットを縮小再生産していくんだったら変わらなくてもいい。 でも、僕ら…あえて僕らって言うけどさ、お客さんを適度に入れ替えながら、どんどん面白いこと、新しいことをやっていかないといけない仕事じゃない。 そのときに、やっぱり“自立していること”って大事だと思うんだよ。 みんな右と左の話だと思っているじゃない。僕からしてみると、「共同体派か自立派か」って話なんだよね。 今SNSで「石丸のしゃべり方がキモい」とかアンフェアな攻撃をしてるのは醜悪だと思う。同じようなことを冷笑派は蓮舫にやってるじゃない? どう考えても言いがかりみたいなことをさ。 どっちもやってることは同じ。それって「次のモノをつくるアクション」じゃないんだよね。 天野: はい。 宇野さん: この問題は、会社員をやっていると、自立してるタイプの友だちを見つけるのが極端に難しくなって、それを見つける回路もない…ということだと思うよ。 天野: 本当にそうですね。 宇野さん: 僕は飲み会に行かなくなって、「とにかく仕事だけで勝負を決めよう」と思ったの。 取材のときとか打ち合わせのときにちゃんと全力で挑んで、「ああ、この人は面白いな」とか「この人ちょっと好きだな」と思ったら、自分から仲良くなりにいく。 それで十分やれてるんだよね。