「SNS×政治」で仲良かった人と疎遠になる…宇野常寛さんに相談したら「50年以上前に結論は出ている」と言われました
「ビジネス書とか嫌い」な宇野さんが、なぜ箕輪厚介さんを信頼しているのか?
天野: 「タイムラインの潮目を読むやつが一番嫌いだ」って宇野さんが、前に箕輪さんの本のあとがきに書かれてたじゃないですか。 それ、すごく感動したんですよね。 宇野さん: 単純に「人間としての器」の話なんだよね。 僕は箕輪さんの意見に賛成もあれば反対もあるよ。たとえば僕はラーメンは大好きだけど、サウナは苦手なんだよね。 ※箕輪厚介さんはサウナフリークとして知られ、またラーメン「箕輪家」を出店しています 宇野さん: 箕輪さんは「宇野さんはサウナに行かなきゃダメだよ」みたいなことを、絶対に言わない。 でも、僕の昔からの仲間の書き手や編集者たちは、「箕輪なんかと付き合うな」って一時期すごく言ってきた。“文春砲”が出る前からだよ。 そこって「世の中の優先順位」みたいなものの話でさ。 「特定の共同体のなかで、人を敵か味方かでジャッジして、味方とつながって安心する」っていうことを、人生の最上位に置いているか、置いていないかだと思うわけ。 箕輪さんは、上位に置いていないんだよ。 天野: う~ん、なるほど。 宇野さん: あの当時彼を叩いていたオールドタイプの出版系の人たちは、箕輪厚介っていう仮想敵を叩くことによって“自分たちの共同性”を確認してたわけ。 で、その踏み絵を僕に仕掛けていたんだよね。「宇野、お前はどっちなんだ」って。 別に僕は箕輪さんのすべてが素晴らしいとは思わない。基本、ビジネス書とか嫌いだしね。 天野: はい。 宇野さん: ただ、箕輪さんは「共同性の踏み絵」を人に強いるようなことはしないんだよね。 この一点において、箕輪さんのほうが信用できると僕は思ったわけ。
「“天皇陛下万歳”と“民主主義は素晴らしい”は同じ人が言っていた」
宇野さん: 昔、吉本隆明って人がいてね。 戦争が終わったときに、それまで「天皇陛下万歳」って旗を振っていたやつらが、GHQが乗り込んできたとたんに「民主主義は素晴らしい」「自分たちは生まれ変わりました」と言ってて「こいつらは何なんだ?」と思ったと。 でも、「考えてみたら、彼らはむしろ何も変わっていない」と。 まわりが「天皇陛下万歳」って言ってるからそう言ってるだけだし、今度はまわりが「戦後民主主義万歳」「新憲法万歳」と言い出したからそう言っている。 結局、長いものに巻かれる「自立していない人間」だからこうなっちゃうんだ、ということを彼は言ったわけ。 天野: …今もそう変わってないんじゃないかってことですよね。 宇野さん: そう。僕、Facebookを見ると、右左ちょうど半々ぐらいなんだよ。 サブカルチャーとか文学系の人たちって、基本蓮舫支持者で左派だし、反対にテック系とかビジネスの人っていうのは右派が多い。 …すごい嫌な言い方をすると、要するに人って「自分の人生を肯定する物語」を求めようとするわけね。 天野: はい。 宇野さん: そのときに「政治的に正しい」っていう方向に行っちゃう人がすごく増えている。 たとえば、僕が嫌いなネオリベ系の人たちって、「自分は成功している」「頭がいい」と思っている人が多い。しかし、自分で思っているほど周囲からはそう思われていない。それで、自分を肯定したいっていう欲望から“負けてる側”を攻撃するわけ。そのほうがコスパがいいから。そんなこと考えちゃう時点でバカだなって僕は思うけどね。 天野: うんうん。 宇野さん: 人生を肯定する物語を見つけようとすると、そんなふうに“闇落ち”していく。 そのときに、今、「SNSで政治について発言する」っていうのが一番コスパがよくなっている。 この程度のことって、ちょっと頭のいい高校生が15分ぐらい考えたら分かりそうなことだから、それが分からずに政治の話に乗っかっているやつらって「マジでパーだな」と思ってます(笑)。