著名人も公表する「男性更年期障害」――メンズヘルスの第一人者に聞く、主な症状と対策 #性のギモン
「イライラする」「笑わない」「おっくう」だと感じたら要注意
――どのような場合、男性更年期障害だと疑われますか? 堀江重郎: 「イライラする」「笑わなくなった」「あらゆることがおっくうに感じる」この3つが当てはまる場合、男性更年期障害の疑いがあります。そして、1人で生活していて友達がいない方は、リスクが高い傾向にありますので特に注意です。 もし症状が重いと思われる場合は、男性更年期障害かどうかをチェックする「AMS調査表」というものがありますので、そちらでも確認してみてください。この調査で「医療機関を受診してください」という結果が出た場合はすぐに受診することをおすすめします。 ――医療機関を受診する場合、どのように病院を選べばいいのでしょうか。 堀江重郎: どの病院に行くべきか迷われた場合は、日本メンズヘルス医学会のホームページ上で、メンズヘルス外来あるいは男性更年期外来を一覧で掲載していますので、そちらを参考にしてみてください。 また泌尿器科では、ホルモン量が減っていないかを調べることもできます。最近は医療機関に行かずに唾液でだいたいのテストステロン量を評価できるものもありますので、病院へ行く時間が取れないという方はそちらを活用するのもいいと思います。ただし、ホルモン量は判断の基準にはなるものの、それだけで男性更年期障害かどうかを判定できるものではありませんので、あくまで参考程度にしてください。 ――男性更年期障害と診断された場合、医療機関ではどのような治療が行われるのでしょうか? 堀江重郎: 日本では男性更年期障害の治療手段が少ないのが現状で、日本でいま保険適用されている薬は、昭和40年代に承認された注射薬が1剤あるだけです。しかし、海外では非常に多くの治療薬があり、最近は日本でも自費診療にはなってしまいますが、テストステロン認定医によるゲル製剤や、海外の治療薬、漢方薬の処方なども増えてきています。
予防策は「運動」「質の高い睡眠」「友達との交流」
――男性更年期障害を予防する方法があれば教えてください。 堀江重郎: 基本的なこととしては、運動と質の高い睡眠です。体を動かす、筋肉を使うことは、テストステロンの分泌を促します。睡眠の質を高めるためには、夜9時以降はスマホやパソコンなどのIT機器を見ないようにしましょう。スマホやパソコンは交感神経を活性化させてしまい、知らず知らずのうちに緊張が生まれて眠れなくなることから、結果的にテストステロンの分泌を損なうことがわかっています。 それから、自分が承認されたり、心地よく思う場所を作ること。自分が活躍できる場を持つのもいいですね。ボランティアをしたり、少年野球で審判やコーチを務めたり、趣味の場があったり、行きつけのお店があったり、そういうコミュニティを持つと良いと思います。そういう場がなくとも、仲のいい友達がいることで予防策になります。友達は自分にとって心地よく、自分を認めてくれる存在になりえますから、そのような友達を作って定期的に会うことは、予防の重要なファクターになります。 ――男性更年期障害の方やその疑いがある方に対して、家族や職場など、周りの人はどのようにサポートするといいのでしょうか。 堀江重郎: ご家族であれば、お父さんを「認めてあげる」「褒めてあげる」ということが非常に重要だと思います。職場の中でも、お互いを認めて称える風土を作れるといいですよね。最近は社員同士で感謝の気持ちを気軽に伝えたり、称賛を示したりするアプリやツールなども出てきていますので、テレワークの場合はそういうものを活用するのもいいでしょう。 ----- 堀江重郎 1960年生まれ、順天堂大学院教授、泌尿器科医。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、国立がんセンター中央病院などを経て、2003年に帝京大学医学部主任教授(泌尿器科学)に就任。2012年より順天堂大学大学院医学系研究科教授泌尿器外科に所属。男性ホルモンの低下に起因するさまざまな疾患の診断と治療を行う日本初の男性外来「メンズヘルス外来」を立ち上げるなど、日本の泌尿器科医療をリードする第一人者。 文:中森りほ 制作協力:BitStar 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。