著名人も公表する「男性更年期障害」――メンズヘルスの第一人者に聞く、主な症状と対策 #性のギモン
男性更年期障害は、加齢と外的環境によるテストステロンの減少が原因
――男性更年期障害はテストステロンの減少が影響しているということですが、原因は何なのでしょうか? 堀江重郎: 原因としては二つあります。一つは、加齢に伴いテストステロンを分泌する臓器である、精巣の機能が低下すること。もう一つは、ストレスや外的環境でテストステロンの値が低下することです。必ずしも加齢だけが原因ではないので、20代や30代でもテストステロンが低下して男性更年期障害のような症状が起きるケースもあります。 ――男性更年期障害は女性の更年期障害とどのように違うのでしょうか? 堀江重郎: 女性の更年期障害は、閉経前後に起こる女性ホルモンの低下や乱高下など、身体の物理的な事情が起因となっています。 一方、男性更年期障害は環境要因が大きい。そもそもテストステロンは、外に出かけて獲物をとって帰ってくるために必要なホルモンなんですね。狩猟採集時代における「獲物をとる」ということと同じように、現代社会においても仕事で何らかの達成感があるとか、自己実現が図れているとかがホルモンの分泌に大きく影響します。そのため「自分があまり高く評価をされていない」「みんなに承認されていない」「自分の自己実現ができていない」「自分を表現する場がない」という場合に男性更年期障害を引き起こしやすいと言えます。仕事は楽しくなくても「仕事後に近所のスナックに行くのが楽しみ」とか「休日は仲間とゴルフをする趣味がある」など、自己実現、自己表現ができる場や仲間がいると男性更年期障害になりにくいとも考えられています。 ――男性更年期障害の患者数は増えてきているのでしょうか。 堀江重郎: 残念ながらデータはありません。ただ、臨床医の中では、コロナ禍でテレワークが増えたことによって患者数が増えてきたのではないかという実感があります。承認欲求は、人間と人間が実際に会って話し、非言語的なメッセージを受け取るなど、インタラクションが大きく影響します。しかし、テレワークではこれが得にくい。特に年齢が上がってくると「テレワークでは仕事の達成感がなかなか得られない」という人も多いのではないかと推測します。