2025年も超重要「フィンテック10大トレンド」、DXやAI、BaaSはどうなる?
BaaSの新たな展開
「組込み型金融」の典型的な形態であるBanking as a Service(BaaS)は、顧客基盤を持った非金融事業者が銀行機能をサービスに組み込むことによって、顧客満足度の向上や関係性強化を図るというのが典型的なケースであるが、最近のBaaS事案は多様化している。 2024年に発表となった事例をみても、楽天銀行を利用したJREバンクのようにかなり思い切った優遇条件を提示して顧客との関係強化を図っているケース、GMOあおぞらネット銀行のように環境価値取引を行うためのデジタル通貨「DCJPY」を発行するケース、UI銀行が関西電力の「ゼロカーボン社会の実現に向けた新たなデジタル金融サービス事業」を提供するケース、みんなの銀行が暗号資産取引所ビットトレードと連携してクイック入金を開始したケースなど、単なる銀行メニュー追加にとどまらない事例がみられるようになっている。 2025年にはさらに新しい付加価値を追求する事例や、これまでになかった事業者の参入による新しいBaaSが出現することが予想される。
デジタル通貨の実用化
中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、各国とも研究を進めており、2024年4月には、BISの企画・運営により、フランス銀行(ユーロ圏を代表)、日本銀行、韓国銀行、メキシコ中銀、スイス中銀、英国中銀、米国連邦準備制度理事会(FRB)の7中央銀行が参加して、CBDCを利用した国際決済についての検討を進めるための実証実験「プロジェクト・アゴラ」に着手した。 各国中銀ともCBDC導入がすぐでないと説明しているケースが多く、日銀においては導入するかどうかについても明言を避けている。 とはいえ、先行する中国を意識すると各国とも導入に向けた準備を進めざるを得ないことに加え、CBDCの実用化に向けて国際決済をどのようにするかは避けて通ることができない課題として各国が意識するようになっている。このため、2025年には各国参加による実証実験の進展が予想される。 ステーブルコインについては各国での法的な枠組みが出そろいつつある中で、実際に取引に使われているのは法定通貨のほんの一部であり、時価総額が100憶ドルを超える米ドルと互換性を持つステーブルコインは、Tether(USDT)とUSD Coin(USDC)の2種類にすぎない。 とはいえ、フィンテック企業の草分け的存在のPaypalが2023年8月に参入したように、今後はさらに決済実需にもとづいたユースケースが増えていくことが予想される。 ステーブルコインと似た形態として、金融機関が預金をもとに発行する「預金トークン」も注目を浴びている。日銀は「海外における「預金のトークン化」の取り組みについて」というレポートを2024年6月に発表しており、JPM Coinなどの事例について分析しており、法人決済などにおいて新しいユースケースが出現する可能性がある。