2025年も超重要「フィンテック10大トレンド」、DXやAI、BaaSはどうなる?
デジタル証券の多様化
ブロックチェーン技術を活用した証券のデジタル化によって、取引の透明性や効率性を高めるとともに、新たな投資機会を提供することが期待されているが、国内のデジタル証券市場は、以前の実証実験から実用段階に移行したものと考えられる。 2024年6月段階の発行総額は1400憶円に達しており、特に不動産などの実物資産を背景に発行されるReal World Asset(RWA)としてのデジタル証券が注目を浴びている。 最近では、丸井グループがグリーンボンドとしての社債を2024年5月に発行したように不動産以外の分野での事例も出ている。また、フィリップ証券が2024年8月に発行した映画製作の資金調達を目的としたデジタル証券では、直木賞を受賞した真藤順丈氏の「宝島」の映画化にあたり、映画製作委員会への出資で得られる権利をデジタル証券化して、小口販売しており、単なる資金調達だけではなく、顧客とのエンゲージメントを強化する狙いもあった。 エンターテイメントのみならず、2025年には各種プロジェクトの資金調達を目的としてデジタル証券を活用することも考えられ、発行形態の多様化とともに発行市場の拡大が期待される。 海外に目を転じるとHSBCが金を裏付けとする「Gold Token」を2024年3月より発行しており、国際的な相場高騰によって注目されている金投資をデジタル資産の取引インフラで実現することによって富裕層顧客の利便性を向上させている。 2025年には、こうした実物資産に裏付けされたデジタルトークンの発行の事例は内外で拡大するものと考えられる。
保険のパーソナライゼーション
インシュアテック(Insurtech)は、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、保険業界に革新をもたらす取り組みを指す。AIなどの技術進化がもたらす顧客データ活用の進展によって、2025年には保険商品のパーソナライゼーションが進むものと予想され、特に以下のようなインシュアテックでの商品開発が注目される。 ・ウェルネス:住友生命が20218年に導入した「Vitality」以降、各社とも健康増進型保険を導入しているが、ウェアラブルデバイスやヘルスケアアプリを活用し、個々の健康状態に合わせた保険が拡充されていくようになる。 ・福利厚生:企業は従業員に対して、デジタル技術を活用した効果的な福利厚生プログラムを提供し、従業員満足度の向上に努めることになる。2024年3月に住友生命が「「Vitality福利厚生タイプ」を発売、2024年5月に第一生命がベネフィット・ワンを完全子会社化したように、保険会社がその担い手を目指すようになっている。 ・ライフスタイル:これまでに画一的であった保険も、個々のライフスタイルやニーズに応じたカスタマイズ可能な商品に移行していくことが期待されるが、その実現にはテクノロジーの活用が必要不可欠となる。これまでの保険基幹システム、いわゆる「レガシーシステム」ではなかなか柔軟な商品開発が難しいことから、2025年にはイノベーティブなスタートアップの出番が増えるものと予想される。 これまでにもこうした点を意識した商品提供や保険会社のM&Aはみられたが、2025年には特に利用者個々のニーズに対応した取組みが強化されていくものと予想される。