タイ 美術館&ギャラリーガイド。現代タイを考えるポリティカル/ソーシャルなアートスペース7選+α(文:福冨渉)
【コーンケン】MAIELIE Khonkean (マイ・イーリー・コーンケン)
タイの現代史のなかで、東北タイの人々は強い抑圧と侮蔑にさらされて、社会的格差の最下層に置かれてきた。とくに2010年以降、文化芸術を通じてそうした状況への疑問が呈されるようになってきている。 MAIIAMの創設者であるエリック・ブンナーク・ブースが、東北タイの中心といえるコーンケン県に開いたスペースが、MAIELIE(マイ・イーリー)だ。市街の南側にあるブン・ケン・ナコーン池が望める場所に、2020年にオープンした。同年には、近年増えている市内のギャラリーやアートスペースと共同で、東北タイの「抵抗の美学」を示す作品を展示する「Khon Kaen Manifesto」を開催するなど、広い東北タイのアートシーンにおけるひとつの中心ともなっているようだ。現在MAIIAMで展示されているWilawanの「Mom of Alterity」は、先にここで展示されてから、チェンマイに巡回していった。 コーンケンといえば日本でも知られている映画監督・アーティストのApichatpong Weerasethakul(アピチャッポン・ウィーラセタクン)の出身地だ。MAIELIEでは2022年の「A Minor History」など、彼の展示が複数回開催されている。個人の夢や記憶の表現が社会や政治の問題にも触れるというのが作家のこれまでの方法論だが、それが出身地であるコーンケンで展開されることで、ますます力を持ったものになりうるだろう。 現在は、2025年1月までの予定で、現代の東北タイ社会と文化に変化をもたらしたものを複数の作家が描く「CCTV: Collective Circuit Time Vision」が開催中だ。 Facebook:https://www.facebook.com/MAIIAMchiangmai/ Instagram:https://www.instagram.com/maielie.khonkaen/