タイ 美術館&ギャラリーガイド。現代タイを考えるポリティカル/ソーシャルなアートスペース7選+α(文:福冨渉)
【バンコク】おすすめギャラリー&アートセンター
バンコクは、ほかにもこんなところがオススメ。 WTF Gallery & Café(WTF ギャラリー&カフェ):https://www.wtfbangkok.com BANGKOK CITYCITY GALLERY(バンコク・シティーシティー・ギャラリー):https://bangkokcitycity.com The Jim Thompson Art Center(ジム・トンプソン・アート・センター):https://www.jimthompsonartcenter.org Bangkok Art and Culture Centre(バンコク・アート&カルチャー・センター):https://www.bacc.or.th
地方の美術館とアート・スペース
日本のおよそ1.4倍の国土面積をもつタイには、バンコクを含めて77の県がある。だが、20世紀を通じて進んできた国民国家としての統合のなかで、政治・経済・文化のほとんどの面がバンコクに集中してきた。閑却されてきた地方の声や物語を(中央タイが提示する「多様性」の一環として利用するのではない形で)響かせようという試みが増えてきたのは、ようやく21世紀に入ってからではないだろうか。せっかくなので、ここでは地方の美術館とアートスペースも少しだけ紹介する。
【チェンマイ】MAIIAM Contemporary Art Museum (マイ・イアム)
もはや紹介の必要もないくらい日本では有名になっているような気もするのだが、北部チェンマイ県に行ったら絶対に外してはいけないのが、MAIIAM(マイ・イアム)だ。チェンマイの市街地からは車で20~30分という距離のところに、鏡面タイルが全面に貼られた巨大な建物が登場するので、なかなかインパクトがある。2016年にオープンした、タイでは最大級の私設現代美術館だ。タイだけではなく、東南アジアやヨーロッパの現代作家たちの作品も積極的に展示していて、その多くが社会に対する鋭い問いを投げかけている。 2024年10月21日まで開催予定の展示「Mom of Alterity」では、アーティストのWilawan Wiangthong(ウィラーワン・ウィアントーン)が、ありとあらゆる素材を用いて人間の身体を「Mom of Alterity」=「他者性の母」に変質させる。様々なメディアで表現されるその姿を、自身の出身地でもある東北タイでの調査から得られた物語で覆う。 こうした抽象的な問いを立てる展示もあれば、Thasnai Sethaseree(タッサナイ・セータセーリー)の展示「Cold War: The Mysterious」(2022)のように、タイの政治史にまっすぐ突っ込んでいくような作品群も展示される。そのバリエーションや規模からしても、現代タイで最重要のアート空間のひとつと言えるだろう。 訪問は乗合バスや配車アプリなどで。タイの美術館としては珍しく入館料がかかるので、入口でチケットの購入を。とはいえ高くても大人料金の200バーツ(800円程度)程度だ。 公式サイト:https://maiiam.com Facebook:https://www.facebook.com/MAIIAMchiangmai/ Instagram:https://www.instagram.com/maiiam_art_museum/